お蔵入りから1年、O・J・シンプソンの「殺人告白」本を販売へ。

2007/08/31 14:02 Written by Maki K Wall@駐米特派員

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人々に尊敬されていた元NFL選手が、殺人容疑者というショッキングな事件のためか、「世紀の裁判」とまでいわれた、O・J・シンプソンの元妻殺害事件の法廷劇。もう13年も前のことなのに今でも記憶に鮮明なのは、それだけメディアの報道が当時加熱していたからでしょうか。ハイウェイ上の追跡、シンプソンに雇われた「ドリーム・チーム」のベテラン弁護士たち、そして人種差別問題を大きく取り上げた裁判の経過……などなど、どれをとってもドラマのような出来事でした。

長期に及んだ同裁判は、1995年にシンプソンへの無罪判決が下されましたが、その後、被害者ロナルド・ゴールドマン氏(シンプソンの元妻二コールさんの友人で、彼女と同時に殺害された)の家族が起こした民事裁判では、逆に有罪判決となりました。シンプソンには、被害者家族へ3,350万ドル(日本円で約40億円)の損害賠償支払いの命令が下されたのです。

しかし刑事裁判での弁護士費用の支払いなどで、すでに財産が底をつきはじめたシンプソン。豪邸の売却などをした後でも、賠償金支払いは完了していないのだそう。

ところがそのシンプソンが昨年、「If I Did It(もし自分がやったなら)」という、「告白」本とも受け取れる書籍をハーパー・コリンズ社から出版するというニュースが流れました。自分が犯人だったら、どのように元妻とゴールドマン氏を殺害したか、それを説明する内容なのだそうですが、自分が犯したかもしれない殺人をネタに、本を書いて金儲けをしようとしているとして、全米から大批判が起こりました。結果として人々から苦情が殺到した同社は出版を取り止め。出版時期に合わせて放送を予定していたシンプソンのTVインタビューも中止されたのです。

あれから約1年。今度はそのハーパー・コリンズ社から「Beaufort Books」という企業に販売元が変わり、問題の本が出版されると再度発表されたのです。書店大手の「Barnes & Noble」は当初、この本を店頭に並べることを拒否していました。しかしその後それを撤回。なんでも最初の決定は需要の低さを見込んでのことだったそうですが、その後同社が受けたオンライン注文の状況から、読者からのニーズが高いことを知り、

「市場での需要がある限り、同社では『If I Did It』を提供するのが妥当だと考える」

とポリシーを変更したとのこと。……なんだかなぁ。

もちろん今でもこの出版に対して、強い嫌悪感を感じている人々は少なくありません。亡くなった2人の家族のことを少しでも考えていれば、シンプソンも出版元も、今回の本のことは見合わせていたのではないかと思うのですが……。この辺に彼らと世間とのモラルの差が垣間見れますねぇ。

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