英音楽シーン「マッドチェスター」立役者、トニー・ウィルソンさんが死去。

2007/08/13 22:31 Written by コジマ

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1980年代後半、英北西部にある綿織物とサッカーの町マンチェスターを中心に起こった音楽の一大ムーブメント「マッドチェスター」。ダンスミュージックや60年代に英北部で流行したノーザン・ソウル、ビートルズ以降のUKロックを融合し、さらにドラッグ文化を加えたサイケデリックなサウンドが特徴で、ストーン・ローゼズやニュー・オーダーなどを輩出、その勢いはマンチェスターから全英、そして世界へと広がっていったのだ。

このムーブメントの中心になっていたインディーズ・レーベル、ファクトリー・レコードの設立者であるトニー・ウィルソンさんが8月10日、心臓発作のために亡くなった。ウィルソンさんはケンブリッジ大学を卒業後、BBCなどのニュース番組でレポーターを務め、音楽番組のプレゼンターも担当していたのだけど、セックス・ピストルズのライブに影響を受けて78年にファクトリー・レコードを設立。ニュー・オーダーの前身であるジョイ・ディヴィジョンをはじめ、ドゥルッティ・コラムやハッピー・マンデーズなどを育て、流行発信地となったクラブ「ハシエンダ」もオープンし、ムーブメントの活性化に貢献した。

その栄光と没落について描いた03年公開の映画「24アワー・パーティ・ピープル」では、映画の案内人としてスティーヴ・クーガンがウィルソンさんの役を演じており、この作品を通じて知った人も多いと思うのだ。ぼくはこの映画が大好きで、ほんの数日前にもDVDで観たばかりだったため、突然の訃報にすごく驚いたのだ。

ウィルソンさんは92年のファクトリー・レコード破産・解散後、再びジャーナリストとして活動していたようだけど、昨年に腎臓がんを発症。今年初めに腫瘍摘出手術を受けたものの完治せず、その影響から今回の心臓発作を起こしたのだそう。この治療には1カ月で3500ポンド(約83万円)の費用がかかる薬剤の投与が必要だったのだけど、英国民保険サービスが費用の負担を拒否したため、友人たちが援助していたという裏話もあるようなのだ。

ファクトリー・レコードやウィルソンさんの手法についてはさまざまな批判があるものの、世界を席巻したムーブメントを支えた重要人物であることはたしか。音楽ファンとしては、その死を悼まずにいられないのだ。解散か活動継続かはっきりしないニュー・オーダーも、これを機に仲直りしてくれたらいいなあ。

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