日本でも一部のメディアで紹介されているのだけど、ドイツのベルリン動物園で人気者となっているホッキョクグマのクヌート(Knut)。昨年末に生まれた子グマなのだけど、一緒に生まれたもう1頭が生後4日目で死亡、母クマに育児放棄されるなど、生まれて間もないのにかなり困難な人生を送っているのだ。
しかし、動物園の職員による不眠不休の飼育によって、現在もすくすくと育っているもよう。ドイツで最も有名な週刊誌である
デア・シュピーゲルの電子版では、「
CUTE KNUT BERLIN'S BABY POLAR BEAR」と題して特集を続けており、まさにぬいぐるみのような愛らしいクヌートに、ドイツ国民だけでなく世界中から温かい視線が注がれているのだ。うーん、本当に可愛い……。
そんなクヌートの飼育に関して、ドイツ国内でその賛否が議論となっているのだ。発端は、数人の動物愛護活動家が異議を唱えたこと。その活動家らによると、クヌートを人工飼育することは野生の掟に反し、人間に依存するように育ってしまうとのこと。また、成獣になったときに飼育係をケガを負わせる可能性もあるとしている。そして、彼らの答えは「殺処分すべき」で一致しているのだ。
ホッキョクグマの人工飼育は難しく、これまでの成功例は日本の愛媛県立とべ動物園で育てられている
ピースのみ。現在7歳のピースは順調にすくすくと成長しているようだけど、7歳ともなると甘噛みでもかなり危険だそうで、以前のように飼育係と遊ぶことができず悲しい思いをしているようなのだ。
ピースは飼育係を母親として認識しているため、これから先、もっと大変なことになりそう。ピースの悲しい姿や飼育係の筆舌に尽くしがたい苦労、そしてこれから起こるかもしれない事故などを考えると、ドイツの動物愛護活動家たちの意見もあながち残酷とは言い切れない部分もあるのだ。
ただ、きちんと育ち、幸せな一生を送れる可能性がある限り、人工飼育の続行を支持したいのだ。殺してしまったら、そこで可能性はなくなってしまうのだから。同誌の3月21日付け(現地時間)の
記事によると、ベルリン動物園は今後もクヌートの人工飼育続行を約束している。
ちなみに、ホッキョクグマは、エサを求めて移動するための経路である湖が凍らなかったり、エサであるアザラシが減少したりなど、地球温暖化の影響から絶滅の危機が高まっている。国際自然保護連合(IUCN)の2006年版レッドリストでは、これまでの低リスク「保全対策依存」から絶滅危惧に入る「危急」に変更されるなど、かなり危機感は高まっているのだ。