「Dynamite!!」不正疑惑の秋山成勲選手が失格、無効試合に。

2007/01/11 23:57 Written by コジマ

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昨年の大晦日に京セラドームで行われた格闘技イベントの「K-1 PEMIUM 2006 Dynamite!!」。魔裟斗vs.鈴木悟をはじめ、イストバン・マヨロシュvs.山本“KID”徳郁、曙vs.ジャイアント・シルバ、所英男vs.ホイラー・グレシーなどなど話題のカードが盛りだくさんで、地上波唯一の格闘技イベント放送を楽しんだ人も多いのではないだろうか。

そんな「Dynamite!!」で最注目のカードだったのが、メイン・イベントの秋山成勲vs.桜庭和志。秋山選手は、柔道出身ながらプロ格闘家に転向後は打撃でもめきめきと実力を付け、近年は総合格闘技界の“顔”へと成長しつつある選手。対する桜庭選手は、「PRIDE」のリングで数々の華麗かつトリッキーな技を駆使して「格闘技界の最高一家」といわれたグレイシー一族を次々に粉砕し、派手なパフォーマンスでも人気を得てきたベテラン選手なのだ。

この注目のカードは、秋山選手が一方的とも言えるほどに試合をリードし、1ラウンド5分37秒、レフェリーストップによるTKOで勝利を収めた。秋山選手のセコンドに付いたオリックスの清原和博内野手が勝利を称えて抱擁する姿が印象的だったのだけど、この試合、TVなどを見ていて気づいた人が多かったように、開始後4分あたりから、タックルで足をつかみにかかった桜庭選手が何か叫んでいたのだ。

その訴えは試合が終わっても続いており、選手同士がたたえ合うことなかった。桜庭選手が怒りをあらわにしているなか放送が終了し、その後味の悪さは、見ていた人なら誰もが抱いたのではないだろうか。

さて、桜庭選手が叫んでいたのは、「滑る滑る」という言葉。秋山選手の体が滑るというのだ。しかし、審判団は終始“無視”を決め込み、試合後は、FEGの谷川貞治社長が「秋山選手の体から油らしきものは出なかった」「金的やサミング(目潰し)があったなら試合は止めるべきだが、あれは桜庭選手の主張なので止めるべきではない」とコメント。秋山選手も「多汗症なんです」と弁明した。これに対して、巷では「オイルを塗っていたのではないか」という疑惑が囁かれ、さらに、この試合で使われていたオープンフィンガーグローブ(指が自由になるグローブ)の不正も指摘されたのだ。

谷川社長や秋山選手のコメント、審判団の“無視”に立腹した桜庭選手は、試合全体に対して書面による正式な抗議を行い、試合結果の再検討を要請した。「Dynamite!!」を主催するFEGはこれを受けて徹底検証し、1月11日に結論を発表したのだ。その結果は以下の通り(スポーツナビより)。

・グローブ疑惑に対して
グローブ、バンテージとも問題はなかったが、ウォーミングアップ時にロゴ部分がはがれた(映像により確認)ことが事前のチェックで見逃されたために、混乱を生じる結果となった。

・オイル(滑る)疑惑に対して
ワセリン、タイオイル等の塗布はなかったが、秋山は全身にスキンクリームを塗っていた。これは「ワセリン、タイオイルは認められないが、クリームはOKだと思っていた」という秋山の認識不足によるもの。検証、事情聴取の結果、(カメラの前で堂々と塗っていたことなどから)悪意ではなく過失と判断。

こうした検証結果から、今回の試合をノーコンテスト(無効試合)とし、反則行為を犯した秋山選手は「失格」、ファイトマネーを全額没収されることとなったのだ。また、グローブチェックやボディチェックを見過ごし、桜庭選手の抗議を“無視”し続けた審判団に対しても、報酬の50%を没収し厳重注意、チェックを怠った審判員に対しては6カ月間の職務停止という処分を下した。

秋山選手はこれまでも世界柔道選手権に出場した際、対戦相手や参加国から「柔道着が滑る」と抗議されたことがあり、全日本柔道連盟の山下泰裕理事から柔道着を交換するよう指示されたことがあったのだけれど、今回の反則行為と結び付けるのは強引だろうか。

しかし、試合後に「クリームを塗ってたからじゃないですか?」とコメントするならまだしも、「多汗症なんです」と答えていることから、こうした検証・処分が決定してもいまだに秋山選手への批判の声は鳴りやまないのだ。

今回の発表の場に秋山選手も姿を見せ、「何の弁明の余地もありません。桜庭選手、申し訳ありませんでした。どんな処分も受けるつもりでいました」「笑ってまたリング上で向かい合うことができたら」(スポーツナビより)と謝罪しているのだけど、桜庭選手は「こちらは正々堂々と試合に臨んでいるのに、このような結果になったことに対しての今回の処分内容に関しては納得しておりません」()と、怒りが収まらない様子。秋山選手に対するコメントを勘案するに、桜庭選手は秋山選手本人よりもFEGに対して怒っているようなのだ。

不透明な問題で地上波から追放された「PRIDE」なき今、「K-1」は地上波で見られる唯一の総合格闘技イベント。しかし、こうした疑惑に対するすっきりしない決着は、斜陽の格闘技熱をさらに冷ましてしまいそうなのだ。

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