最近でも競走馬のディープインパクや米大リーグの選手たちの使用で話題になっているドーピング違反。禁止項目を設けていないスポーツでの使用が議論されているけど、ぼくがこのドーピングという言葉を知ったきっかけが、1988年に行われたソウル五輪の男子100メートルなのだ。
世界的なヒーローだったカール・ルイス(米国)を破り、9秒79の世界新記録で金メダルを獲得したベン・ジョンソン(カナダ)が、試合後の検査でドーピングの陽性反応が出てメダルと共に記録も剥奪されたのだけど、中学生だったぼくの周りでは「ドーピング」が流行語になったほど。当時放送していた「ビートたけしのスポーツ大将」で「カール君」のあとに「ダイナマイトジョンソン君」という人形が出てくるほど人気者だったベン・ジョンソンの薬物汚染はそれだけ衝撃的だったし、世界的にもスポーツにおけるドーピング取り締まり強化のきっかけとなった事件なのだ。
この事件について、ベン・ジョンソンはかねてから「何者かに陥れられた」という陰謀説を主張してきたのだけど、つい先日、その陰謀にカール・ルイス荷担していたという衝撃の主張を展開し始めたのだ。オーストラリア紙ヘラルド・サンのインタビューに答えたベン・ジョンソンによると、ソウル五輪のドーピング検査の待合室でカール・ルイスと家族同然の付き合いをしていたという米国人元フットボール選手と一緒にビールを飲んだそうで、そのビールに薬物が混入されていたのだという。
ベン・ジョンソンは、陸上競技への復帰が認められた1992年のバルセロナ五輪でもドーピング検査で陽性反応が出たため、陸上競技から事実上永久追放となったのだけど、このときだけでなく、以前から薬物を使っていたことは認めている。ただし、ソウル五輪のときに検出された筋肉増強剤「スタノゾロール」は、今まで使用したことがないと主張しているのだ。
オーストラリアのテレビ局にカール・ルイスの関与を尋ねられ、ベン・ジョンソンは「多くは語らないが……関与していた」(
ライブドアニュースより)と答えている。これが事実なら、とんでもないスキャンダルなのだ。
一方、カール・ルイスはこの元フットボール選手とベン・ジョンソンが一緒にビールを飲んでいたことは認めているものの、無関係であることを主張しているのだという。
「長年薬物を使ってきた」と話している以上、ソウル五輪でも検出された「スタノゾロール」以外の薬物を使用していた可能性もあるだろうし、なぜ事件から20年近く経過した今になってカール・ルイスの関与を主張するのかが分からないけど、ベン・ジョンソンは来年6月の提訴に向けて弁護士と協議中だという。今後も何か進展があったらお伝えするのだ。