低身長は身体障害? 米で成長ホルモン製剤の保険適用を巡り論争。

2006/11/21 23:17 Written by コジマ

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先日、大阪府富田林市の中学生が背が低いことなどでイジメを受け自殺した事件があったように、身長が低いということは他人には分からない、強いコンプレックスを抱かせるもの。ぼくも中学生のときは148センチしかなかったのでかなり気にしていたし、大きくなろうと牛乳を飲んだり、「○○式伸長法」なんて雑誌の広告を真剣に読んだりしていたのだ。

身長が著しく低い人に対しては、成長ホルモン製剤の使用が米国でも日本でも認可されているのだけど、米国での基準は、成人になったときの身長が男性で158センチ以下、女性で148センチ以下と予想される人だそう。しかし、この治療には1人当たり1180万円もかかるうえに、伸びる身長は1インチ、2.5センチ前後だという。この費用に効果が見合っているかどうかについて、米国で議論が起きているようなのだ。

イザで紹介されている症例は、米ウィスコンシン州に住む小学生男子。成績はオールAで、レスリングの腕前も州のトップクラスというから、文武両道の優秀生なのだ。しかし、この男の子には悩みがあった。それが、周りの友達と比べて身長が低いこと。

6歳のときから成長ホルモン製剤による治療をはじめた。しかし、5年生になった現在でも122.5センチだそうで、本人もさぞ悩んでいることと思うのだ。しかも、この治療にかかった年間約230万円を保険会社に請求したところ、支払いを拒否されてしまった。理由は、同製剤の適応条件である「身長が著しく低い」に該当しなかったためなのだ。

この男の子以外でも著しいわけではないけど、低身長に悩んでいる人は多い。そうしたことを鑑みて、2003年に薬剤などの認可を行う米食品医薬品局(FDA)によて、前述のとおり成人時の身長が男性で158センチ以下、女性で148センチ以下と予想される場合も成長ホルモン製剤の使用が認められたのだ。

この男の子の母親は「背が低い男性のハンディは社会出ると女性よりいっそう大きくなる」(イザより)と息子の将来に不安を抱き、これからも治療を続けていくと話しているのだ。

しかし、これに疑問を呈している医師も多い。ミシガン大学小児内分泌科の医師は「わずか1インチ前後、身長を伸ばすだけでこれだけの費用をかけてよいのかどうかは議論の余地がある」()とコメントしている。たしかに、費用に対して効果が低いように思えるし、患者が増えれば増えるほど医療費を圧迫することは想像に難くない。

でも、当事者にとっては、2.5センチでも重要なこと。ぼくも中学生の頃に2センチ伸びて150センチを超えたときにはすごく嬉しかったのだ。HIV/エイズ治療薬の場合もそうだけど、薬価が高いという問題もある。だからといって製薬企業ばかりに責任があるわけではないし、他の病気に対する治療も含めて、こうした費用対効果についてはまだまだ議論の余地があるのだ。

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