アフリカでのエイズの現状が克明に、国境なき医師団が写真展開催。

2006/09/25 23:52 Written by コジマ

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サハラ砂漠以南のアフリカでは現在、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染者は2500万人にものぼり、世界における患者の3分の2を占めるといわれている。先進国では進行を抑える薬が開発されているけど、アフリカでは貧困から満足な治療が受けられず、苦痛を味わいながら死を待つ人々が多いそうなのだ。こうした現状を訴えるため、アフリカでHIV/エイズ治療を無償で行っている国境なき医師団が、東京・原宿で写真展「POSITHIV+〜エイズ in アフリカ」を開いている。

抗レトロウイルス薬(ARV)による治療でHIV/エイズ治療は飛躍的に改善した。完治はしないものの、病気の進行を食い止めることができるケースが増えているのだ。しかし、これは先進国での話。アフリカ、特にサハラ砂漠以南では、貧困のために十分な治療が受けられないでいるのだ。

また、子供への被害も甚大で、エイズによって親を失った子供の数は1200万人にものぼり、引き取る親戚も入るべき施設もない孤児は、路上生活を余儀なくされているのだ。また、子供のHIV感染も問題になっている。15歳未満の子供が毎分1人感染し、毎日1000人が命を落としているという。この背景には、HIVに感染した親から生まれて感染する(母子感染)が薬がないため防げないというものがあるのだけれど、それだけでなく、「処女との性交がHIV/エイズの治療になる」という身の毛もよだつ迷信が信じられており、こうしたことも子供の感染率を上げる原因なのだ。

今回の写真展では、スペイン出身の若手写真家ペップ・ボネットの撮影によるリアルな写真により、アフリカのHIV/エイズの現状を克明に表現しているほか、HIV感染者が15万人にものぼるというケニアのスラム地区で国境なき医師団が設立した診療所「ブルーハウス」の模型を展示し、不十分なHIV/エイズ治療とARVの不足を訴えている。「POSITHIV+〜エイズin」は欧米でも開かれており、高い評価を得たうえで日本でも開催されることとなったのだ。

初日の23日には、国境なき医師団日本の臼井律郎会長と、同医師団のソーシャルワーカーで「ブルーハウス」で活動するベアトリス・ワンデラさんが記者会見を開き、アフリカでは値段や政府の荒廃などの問題から薬が手に入らないために十分な治療が受けられないことを訴え、この現状を多くの人に理解してほしいと述べた。

臼井会長は「先日、トロントで開かれた国際会議では『サハラ砂漠以南で治療を受けているHIV/エイズ患者が100万人にものぼった』と報告され、各国のメディアでポジティブに取り上げられたが、これはとんでもない話。25人に1人しか治療されているにすぎないという現状を認識してほしい」と訴えている。

日本も、先進国のなかでは最もHIV感染者が増加している国。この写真展を見ることによって、アフリカの現状を理解するだけでなく、HIV/エイズについて考えるきっかけになるかもしれないのだ。「POSITHIV+〜エイズ in アフリカ」は30日まで、原宿クエストホールで開催している。

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