「大学で成長したい」、早実・斎藤祐樹投手が進学を表明。

2006/09/12 01:24 Written by コジマ

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今夏の全国高校野球選手権以来、テレビに連日登場し、日本中の話題の的だった早稲田実業の斎藤祐樹投手。加熱する報道に話題(ハンカチ?)先行との声も上がってきているのだけれど、甲子園を投げ抜いた実力は折り紙付き。プロでも数球団、さらには元サッカー日本代表の中田英寿が所属していた芸能事務所サニーサイドアップも獲得に向けて動いていたこともあって、その進路が注目されていたのだけれど、本人が11日に東京・国分寺にある同校で記者会見を開き、大学進学を表明したのだ。明言はしなかったのだけど、どうやら系列の早稲田大学に進むもよう。

今年の甲子園を多いに沸かせ、新たなヒーローとなった斎藤投手。特定球団のファンなら、ぜひとも未来のエースたり得る投手の入団を望んでいただろう。それは球団側も一緒で、複数のチームが獲得に興味を示していたのだ。もっとも、球団にとって魅力なのは、その実力よりも多くの観客を集められるスター性。プロ野球がお客さんを集めなければ成り立たないものである以上、こうしたことは仕方のないこと。しかし、そうしたフィーバーに乗せられてダメになっていった選手が多くいるのもたしかなのだ。

会見で斎藤投手は、プロ入りへ「気持ちが大きく揺らいだ」という心情を包み隠さず話したものの、「最初から希望していた進学は変わらなかった」「大学での4年間が遠回りになるかもしれないけれど、急にプロに行って通用するほど甘くない」と、斎藤選手らしい冷静で堅実な決断を表明したのだ。もしかしたら、米国遠征で打ち込まれたこともこの判断に影響しているのかもしれない。

一方、獲得に乗り出していた某球団のスカウトは、サンケイスポーツに「上(プロ)で伸びるとは思えない。そこそこ勝てても、一流になれるか怪しい」「大学に行くべきだ」とのコメントを寄せている。こうした意見が出るのは、これまでフィーバーのなかで入団して成功しなかった選手たちを見てきたからかもしれない。今の完成度より大学の4年間で心身共にさらに成長できる投手を獲る、スカウトマンも冷静な判断なのだ。米大リーグ、ニューヨーク・メッツの大慈弥環太平洋担当本部長も「プロに入れば客寄せパンダにされ、十分に練習できないまま、自分を見失う可能性があった。。(大学では)国際大会でメジャー予備軍とも対戦できる」とし、斎藤投手の決断を称賛した。ちなみに、斎藤投手が早大に進学するなら先輩になる阪神の岡田彰布監督は、「大学に行ったほうがいいと思っていた。4年間なんか、すぐやで。大学では1年から投げるやろ。(東京)六大学が一番喜んでるんじゃないかな」とコメントした。

その六大学の関係者は、作新学院で甲子園のヒーローとなり、法政大でリーグを活性化させた「江川卓以来のスター選手」と大歓迎のようす。そういえば、松井秀喜外野手(ニューヨーク・ヤンキース)にしろ松坂大輔投手(西武)にしろ昨年のダルビッシュ有投手(日ハム)にしろ、パッと思い浮かぶだけでも、今回くらい全国を沸かせた甲子園のヒーローはみんなそのままプロに入ってたからなあ。斎藤投手の入部によって民放が六大学野球の放映権を獲得するという噂もあり、関係者は戦前、長嶋茂雄、江川卓に続く「六大学の第4黄金期」になることを期待しているという。

「大学に進んで野球選手としても人間としても成長したい」(サンケイスポーツより)と語った斎藤投手。野球に対する真摯な態度を見ていると、甲子園優勝という大目標が達成されてもまだまだ成長しそうなのだ。そして、その視線の先にあるのは、六大学野球でもプロ野球でもなく、メジャーのマウンドなのかもしれない。

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