全国高校野球選手権、壮絶な決勝2試合を経て早実が初優勝。

2006/08/21 21:58 Written by コジマ

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第88回全国高校野球選手権の決勝再試合が21日に行われ、早稲田実業(西東京)が駒大苫小牧(南北海道)を破り、1915年の第1回大会以来通算27度目の出場で初の優勝を果たしたのだ。記録ずくめとなった今年の甲子園、決勝戦も37年ぶりの引き分け再試合となったのだけれど、「打高投低」といわれる大味な打撃戦が多かったなか、決勝の2戦は心に残る白熱の投手戦となった。

今年の甲子園は熱かった。連日の延長戦や逆転に次ぐ逆転などの激しい試合が多く、入場者数が第73回大会(91年)以来の85万人を突破したことも、過去10年で最高の視聴率を記録したことも、それを裏付けている。特に、17日に行われた準々決勝第2試合、智弁和歌山(和歌山)対帝京(東東京)の一戦は、今大会の象徴ともいうべき試合だろう。いやあ、大会記録となる両チーム合わせて7本塁打の乱打戦もさることながら、9回表2死で4点差という絶望的な状況から帝京が8得点の猛攻をみせると、その裏には智弁和歌山が5点を入れるという高校野球らしい展開は、非常に面白かったのだ。

しかし、こうしたある意味“大味な”試合が多かった今大会、決勝戦であれほどの投手戦が見られるとは思ってもみなかったのだ。

20日の決勝戦は、早実の斎藤祐樹投手と駒大苫小牧の田中将大投手はそれぞれエースの名に恥じない活躍をし、37年ぶりの決勝引き分け再試合となった。

特に、斎藤投手は5日間で4試合目で3連投となったにもかかわらず、この日は15回178球を投げきり、7安打16奪三振。それだけでなく、15回2死に駒大苫小牧の四番打者・本間篤史外野手を迎えた場面では、140キロ台後半の剛速球を4球も記録。初球で147キロのスピード表示がされると、甲子園球場を埋めた5万人の観客から大きなどよめきが聞こえ、守備側にもかかわらず、球場全体から斎藤投手への大声援が飛び交った。

そして迎えた再試合では、1回に早実が先制し、2回、6回、7回にも1点ずつ追加した。対する駒大苫小牧は6回に中沢竜也内野手がソロ本塁打を放ち、9回にも中沢内野手が2点本塁打で1点差に迫ったものの、後続を断たれて試合終了。早実が初優勝を果たしたのだ。

「超高校級」といわれ斎藤投手よりも評判は高かったものの、今大会で今ひとつ調子が出なかった田中投手。昨日に続いてこの日も素晴らしい投球をしていたけど、四球からちょこちょこと点数を取られて勝利を逃してしまったのだ。ちなみに、敗戦投手は先制点を献上し1回2死で降板した2年生の菊地翔太投手になっている。駒大苫小牧の香田誉士史監督は、チームの一体感を出すためにあえて田中投手を先発させないことを語っていたけど、決勝の2戦だけは田中投手を先発させてもよかったのではないだろうか。来年のチームを引っ張っていく菊地投手にとって辛い記憶とならなければよいけれど……。

とはいえ、初優勝の早実にはもちろん、部員の卒業生が飲酒・喫煙で補導されたために、選抜出場辞退も含めてボロボロになったチームをここまで立て直した駒大苫小牧にも惜しみない賛辞を送りたいのだ。プロとは違って粗いゲーム内容ながら、1試合にかける高校生たちの真剣な姿を見ていると、どうにもこうにも涙が出てしまう。そんな感動を与えてくれたすべての球児に、こころから感謝したいのだ。


☆関係者のコメント

和泉実・早実監督
「88回待った、その歴史で勝てた。(斎藤の4連投を)心配しているが、彼の力、彼を守るみんなの力が最後に勝った。僕は最大の応援団でしかなかった。選手には本当に敬服する」(朝日新聞より)
「本当にうれしい。最後は前に出て斎藤や選手をしっかり見ていた。駒大苫小牧は力がある。本当に強い。駒大苫小牧のようなチームを作れるとは思わないが努力していきたい」(スポーツニッポンより)

斎藤祐樹投手(早実)
「(王貞治・ソフトバンク監督ら)大先輩もできなかったことに今、自分たちが主役になれたことがうれしい。仲間を信じてずっとマウンドを守ってきた。応援してくれたすべての人に感謝したい。(駒大苫小牧の田中投手は)自分たち世代で最もいい投手。自分も負けないようにと頑張った」(朝日新聞より)

香田誉士史・駒大苫小牧監督
「負けた。何も言うことはない。最後まで五分五分の試合だった。みんなあきらめずにプレーをしてくれた。粘り強さがあったからこそ、ここまでこれた。選手をたたえてあげたい。最高のチーム。100点だ」(スポーツニッポンより)
「(3連覇という)記録のためにやってきたわけではない。良い勝負で終われて、少しほっとしている」(朝日新聞より)

王貞治・ソフトバンク監督(早実OB)
「この優勝は、斎藤投手の熱投の一語に尽きる」
「きのうまでの疲れなどすべてを超越したチーム一丸となっての勝利。今はとにかく、ゆっくり休んでください。本当におめでとう!」(読売新聞より)

荒木大輔・西武投手コーチ(早実OB)
「早実らしく、粘り強い野球でした。投手だけではなく、守備も堅く、打線の破壊力もあるし、足の攻撃も出来る素晴らしいチームでした。OBとして誇りに思い、早実の卒業生として、良かったと思います」(朝日新聞より)

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