温泉の効能、科学的実証例少なく見直しの声も。

2006/08/15 22:42 Written by コジマ

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先日お伝えしたように、夏でも人気の衰えない温泉。このお盆に温泉地へ出かけている人も多いのではないだろうか。温泉を選ぶ際に気になることの1つが効能なのだけれど、温泉に掲示されている適応症は科学的実証例が少なく、見直すべきだという専門家の意見が出ているようなのだ。

現在、日本全国で3000カ所以上あるといわれる温泉地。わが国では古くから温泉で病気を治す「湯治」が当たり前のように受け入れられており、最近では「癌に効く温泉」なんてメディアが紹介している温泉地もある。

そもそも温泉の定義とは何なのだろうか。昭和23年制定の温泉法では「地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう。」と定められている。文中でいう別表には、温度を「摂氏25度以上」とし、炭酸ガスや硫黄などの物質含有量が示されている(詳細はhouko.comの温泉法を参照)のだけれど、つまり、地中から湧く水が25度以上であれば無条件で、25度未満でもその別表に記載されている物質が1つでも基準値を満たしていれば温泉となるのだ。

どんなに素晴らしい効能をうたった温泉でも、温泉療養に適した症状である適応症と温泉療養してはいけない症状である禁忌症があり、温泉法では「温泉の成分、禁忌症及び入浴又は飲用上の注意を掲示しなければならない」とされている。これは環境省の例示によって各都道府県知事が決定しているおり、環境省では10年に1度成分分析を行うよう指導している。

この適応症は、いくら政府で奨励し地方自治体の長によって定められたとはいえ、「ここの温泉は古来、こうした病気に効く」と言い伝えられてきた効果を実証せずに採用している場合が多く、科学的に証明されているものは少ないのだそう。

毎日新聞では、こうした言い伝えには、温泉そのものの効果だけでなく、神社参拝による運動や、日常から離れてストレスから解放されたことによる相乗効果も含まれている場合もあるとしている。うーん、確かにこうした側面はかなりありそうなのだ。ただ、メディアで紹介されている癌への効果は、悪性腫瘍はすべての温泉で禁忌症に含まれており、免疫力が上がる可能性は否定できないものの、体力が弱っている人には勧められないという。

禁忌症も見直しが必要なようで、妊娠中はすべての温泉で禁忌とされているけど、最近の研究では入浴者とその他の妊婦を調査したところ、流産や出生体重に差が認められなかったそうなのだ。

毎日新聞では科学的な根拠が示されているものとして、炭酸ガスを含む二酸化炭素泉の降圧効果と、草津温泉(群馬県)に湧く酸性泉のアトピー性皮膚炎治癒効果を紹介しているけれど、温泉療養の効果を得るためには最低2〜3週間は必要で、1日や2日入っただけでは効果はないという。

だけど、ほとんどの人は1〜2日しか温泉地に滞在することができない。そんな人たちへのアドバイスとして、北海道大学院温泉気候医学の大塚吉則教授は「短期間なら泉質にこだわらず、好きな温泉に行くのがいい」と語っている。温泉そのものの効能よりも、「遠くに出掛けて温泉に入る」という行為に療養効果を見出したほうがよいというわけなのだ。

近年は入浴剤を使用している温泉が相次いで発覚するなど、温泉自体の信頼性を観光客に疑われている。こうした適応症の証明や成分調査を環境省の指導通りに行っていくことが、客足を取り戻す最善策なのかもしれない。しかし、調査には多額の費用がかかるだけでなく、源泉に水や殺菌のため塩素を加えているため、源泉を調査したからといって浴槽の湯が同じ成分であるとも限らないという問題もあるため、簡単には解決できそうにないのだ。

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