殺人事件の目撃者、投獄された後忘れ去られる。

2006/08/04 11:23 Written by Maki K Wall@駐米特派員

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殺人事件の容疑者が逮捕されて投獄される……というケースは当たり前にありますが、ペンシルバニア州の法律では、犯罪の目撃者が同様に刑務所送りになってしまう場合もあるのだとか。まったく驚きの話ですが、どうやったらそんなことになるというのでしょう?

同州では毎年増加している凶悪犯罪が社会問題となっていますが、それ以上に困ったことは犯罪の目撃者が犯人からの報復を恐れ、裁判で証言したがらないという傾向なのだとか。そこで近年司法が取り入れたシステムが、証言を拒む目撃者を合法的に拘束するというモノ。検察側が申し立てて判事が許可すると、対象者は裁判で証言するまで刑務所で自由を奪われてしまうのです。いやはや、別に自分から望んで犯罪に出くわしたワケでもないのに、それが原因で無実のまま投獄されるなんて……、かなりイヤなパターンです。

ところが世の中にはさらに運の悪い人がいるもので。この法律のお陰で牢屋暮らしを余儀なくされただけでなく、その後検察側や裁判所から忘れ去られてしまい、余計に「刑期」を送ってしまった男性がいるのだそうです。

この不運の人はコーベル・オッドさん42歳。2003年のクリスマスのこと、ルーサー・タッカーさんという男性が殺される現場に居合わせてしまいました。その後事件の証人として出廷命令が出されましたが、彼は容疑者アルヴィン・ウェイ・Jr からの仕返しを恐れたことと、長年わずらっている精神病を理由にそれを拒絶。そうしているうちに裁判自体が長引いてしまい、業を煮やした検察弁護士が先の目撃者の拘束手続きを取ったというワケです。

こうして刑務所生活が始まったオッド氏。ところがその後当の殺人事件が証拠不十分だとして不起訴処分になってしまったのです。もう証言する義理もなくなった彼ですから、当然自由になるハズだったのですが、ここでなんと検察側と裁判所がオッドさんの存在をすっからかんに忘れてしまったから、さあ大変。何の罪も犯していない上に誰として刑務所から出してくれないのですから……。

家族に弁護士を立ててくれと頼んでみるも、お金の問題でそれもままならず、結局パブリック・デフェンダーと呼ばれる法律家に手紙を書いて直訴したのです。これは主に貧困者のために司法サポートをしてくれる人々のことで、州によっては政府の予算でこのパブリック・デフェンダーの制度がまかなわれてる場合もあるそうです。

そしてこのパブリック・デフェンダーの助けにより、やっと事件を担当した検察弁護士と判事に連絡が取れるようになり、最終的に彼らの不手際が明るみになったのです。しかし晴れて出所することが出来たオッドさんは、結局2ヶ月もの間投獄生活を余儀なくされ、今は怒り心頭だとか。今では自分が被った不当な扱いに対し、損害賠償を求め起訴しているそうです。

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