保守的ロックソング・ベスト50、1位はザ・フー「無法の世界」。

2006/06/14 22:18 Written by コジマ

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保守派の政治論評が掲載されていることで有名な米国の隔週刊総合誌ナショナル・レビューで、この雑誌には珍しくロックの話題を取り上げているのだ。タイトルは「保守的なロックソング・ベスト50(Rockin' the Right―The 50 greatest conservative rock songs.)」。ナショナル・レビュー誌らしい切り口なのだけれど、1位に選ばれたのは、ザ・フーが1971年に発表した「無法の世界」(原題:「Won't Get Fooled Again」)だったのだ。

この特集は、ナショナル・レビュー誌のジョン・J・ミラー記者が昨年、同誌の読者に保守的なロックソングを候補に挙げてもらい、それをミラー記者がMP3でダウンロードして歌詞を検証、50曲の保守的ベスト・ロックソングを決定したのだ。評価の基準は、保守的な考えや感情を表されていて、なおかつ素晴らしいロックソングであること。同記者は「キンクスとラッシュでリストのほとんどを占めれば簡単だったが、多様性を持たせるためにさまざまなミュージシャンの曲を取り入れた」としているのだ。

今回1位に選ばれた「無法の世界」は、71年に発表されたザ・フーの傑作アルバム「フーズ・ネクスト」のラストを飾った曲で、シングルカットもされているのだ。当時としては珍しいシンセサイザーを導入した曲で……と文章で説明するよりもYouTubeで動画を見てもらったほうが話しが早いのだ。うーん、ギターのピート・タウンゼントと、変人ドラマー、故キース・ムーンのかっこいいことかっこいいこと。

この曲を1位に選んだ理由として、ミラー記者は「今は保守派に身を置く夢敗れた革命家たちのテーマソング」とし、ニューヨーク・タイムズ紙でも「反革命的な曲。革命的な利用主義に対して懐疑的だし、とても保守的な曲だ」と語っているのだとか。これに対して、ピート・タウンゼントが自身のブログで激しく反論。「この曲は『私の人生の中心にあるのは売り物ではなく、勝手に利用されるべきものではない』ということを、政治家や革命家たちに教えるためにつくった」と語っているけど、その長い文章からピートがいかに「不快」に思っているかが読み取れるのだ。それにしてもこの曲、マイケル・ムーア監督が映画「華氏911」の主題歌に使おうとしたそうで、その際にもピートは激怒したそうなのだ。保守だろうとリベラルだろうと、政治的に利用されたくないというのがピートの本音のようなのだ。

このほか、2位にはビートルズの「タックスマン」、3位にはローリング・ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」などとなっているのだけれど、8位にランクインしたセックス・ピストルズの「ボディーズ」が目を引くのだ。この曲は、たしかに中絶を批判する歌詞だけど、反体制の代名詞であるピストルズが「保守的な曲」のトップ10に入るとは……。このランキングに入ると、何となく不名誉な感じがするのだ。詳しいランキングは以下の通り。

1.  「無法の世界」 ザ・フー
2.  「タックスマン」 ザ・ビートルズ
3.  「悪魔を憐れむ歌」 ザ・ローリング・ストーンズ
4.  「スウィート・ホーム・アラバマ」 レーナード・スキナード
5.  「素敵じゃないか」 ザ・ビーチ・ボーイズ
6.  「グロリア」 U2
7.  「レボリューション」 ザ・ビートルズ
8.  「ボディーズ」 セックス・ピストルズ
9.  「ドント・トレード・オン・ミー 」 メタリカ
10. 「20世紀の人」 ザ・キンクス
11. 「ザ・トゥリーズ」 ラッシュ
12. 「ネイバーフッドの暴れ者」 ボブ・ディラン
13. 「マイ・シティ」 ザ・プリテンダーズ
14. 「ライト・ヒア・ライト・ナウ」 ジーザス・ジョーンズ
15. 「アイ・フォウト・ザ・ロウ」 ザ・クリケッツ
16. 「ゲット・オーヴァー・イット」 ザ・イーグルス
17. 「ステイ・トゥギャザー・フォー・ザ・キッズ」 ブリンク182
18. 「カルト・オブ・パーソナリティ」 リヴィング・カラー
19. 「キックス」 ポール・リヴィアとレイダース
20. 「ロック・ザ・カスバ」 ザ・クラッシュ
21. 「英雄夢語り」 デビット・ボウイ
22. 「赤いバーチェッタ」 ラッシュ
23. 「ブリック」 ベン・フォールズ・ファイヴ
24. 「秘密警察」 アフター・ザ・ファイアー
25. 「限りなき戦い」 レッド・ツェッペリン
26. 「キャピタリズム」 オインゴ・ボインゴ
27. 「オブヴィアス・ソング」 ジョー・ジャクソン
28. 「ジェイニーズ・ガット・ ア・ガン 」 エアロスミス
29. 「暗黒の航海」 アイアン・メイデン
30. 「ユー・キャント・ビー・トゥ・ストロング」 グラハム・パーカー
31. 「スモール・タウン」 ジョン・メレンキャンプ
32. 「キープ・ユア・ハンズ」 ジョージア・サテライツ
33. 「無情の世界」 ザ・ローリング・ストーンズ
34. 「ゴジラ」 ブルー・オイスター・カルト
35. 「フール・ストップ・ザ・レイン」 クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル
36. 「ガヴァメント・チーズ」 ザ・レインメイカーズ
37. 「オールド・ディキシー・ダウン」 ザ・バンド
38. 「キャント・ドライヴ」 サミー・ヘイガー
39. 「プロパティ・ライン」 マーシャル・タッカー・バンド
40. 「起きろよスージー」 エバリー・ブラザーズ
41. 「ザ・アイシクル・メルツ」 クランベリーズ
42. 「エブリバディーズ・ア・ヴィクティム」 プロクレイマーズ
43. 「ワンダフル」 エバークリア
44. 「ふたりの姉妹」 ザ・キンクス
45. 「タックスマン、ミスター・シーフ」 チープ・トリック
46. 「ウィンド・オブ・チェンジ」 スコーピオンズ
47. 「ワン」 クリード
48. 「ホワイ・ドント・ユウ・ゲット・ア・ジョブ?」 オフスプリング
49. 「アボーション」 キッド・ロック
50. 「スタンド・バイ・ユア・マン」 タミー・ウィネット

ミラー記者は「このリストをそのままiPodのプレイリストにしてもクールであることを願う」としているのだ。うーん、でも、なんとなく古くさい香りがするのはぼくだけだろうか。頑張ってキッド・ロックやオフスプリング止まりだし……。

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