アメリカの医療ドラマなどを観ていると、時々 "DNR" という言葉が出てきます。これは "Do Not Resuscitate" (蘇生禁止)の略で、例えばもう救命の可能性のない患者さんがいた時、これ以上不適切で不必要な延命を行わないよう、患者さん自身が前もって指示を出しておくことです。いわゆる尊厳死の観念に通じるもので、アメリカでは "Living Will" という一般的な遺言状に書かれていることが多いそうです。
さてその "DNR" なんですが、指示書をいつも持ち歩いていたり、行きつけの医療機関と明確な情報交換をしていれば、いざという時も問題はないでしょう。しかし病はいつ起こるか予測できないもの。意識不明の状態で病院に担ぎ込まれることもありえます。そんな時自分の "DNR" の希望をどうやって伝えれば良いのか?これは由々しき問題であります。
アイオワ州にお住まいのマリー・ウォールフォードさん(80歳)も、自らの人生の終わりは自分の望みどおりにしたいと、つねに強く感じていたそうです。もし自分に何かが起こった場合のために、遺言状は冷蔵庫の横に貼り付けてあります。しかしそれだけではやっぱり安心できなかったウォールフォードさん、なんと自分の胸部に "Do Not Resuscitate" と刺青で書いてしまったのだそうです。
「周りの人は私をクレージーだと呼ぶかもしれないわ。でもいいの。時には一番狂気じみたアイデアが、最も効果的だもの」
と語るウォールフォードさん。うーむ、80歳で刺青か、度胸あるなぁ……なんて、違う方に感心してしまうワタクシですが(笑)。
ちなみにこの刺青メッセージ、果たして本当に法的効力はあるのかというと、残念ながら今のところ「無い」そうです。やっぱり公的書類じゃないといけないそうで、ウォールフォードさんの努力はちょっとばかり無駄に終わっているとか……。あちゃ(汗)。