ネオUKパンクの新星、パディントンズのライブに潜入。

2006/04/26 23:11 Written by コジマ

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「セックス・ピストルズのワルさとクラッシュの賢さの融合」、「UKパンクの初期衝動にガレージ・ロックの疾走感」、「ピート・ドハーティ(ベイビー・シャンブルズ)とエディ・スリマン(ディオール・オムのクリエイティブ・ディレクター)のお気に入り」――そんなうたい文句で宣伝されている英国のバンド、パディントンズ。25日に東京・渋谷CLUB QUATTROで行われた昨年12月に続く2度目の来日公演に招待されたので、レポートをお届けするのだ。

米国からストロークスとホワイト・ストライプスが渡って以来、UKロックシーンは良質の新人バンドがどんどんわいて出ている。リバティーンズやレイザー・ライトを旗頭としたパンク・リバイバルや、フランツ・フェルディナンドを旗頭としたニューウェイブ・リバイバル、ブリット・ポップを受け継ぐカイザー・チーフスやアークティック・モンキーズ、50〜90年代の音楽を取り入れたズートンズ、パンクにダブやスカを取り入れたオーディナリー・ボーイズ、独自の世界を築くカサビアンなど、これほど多様な音楽性を持ったバンドがどっと世に出ている(しかも売れている)現象は、UK音楽史上初めてのことではないだろうか。

そんなロック・リバイバル真っ只中の04年にデビュー(ファーストアルバム『ファースト・カムズ・ファースト』の日本盤発売は今年2月)したパディントンズは、「くだらない街」を特集した本で1位となってしまった南ヨークシャー地方のハル出身で、リバティーンズの前座を幾度も務め、イースト・ロンドンでスクウォット(住居不法占拠)を続ける5人組。そのライブには、ピート・ドハーティとケイト・モス、ミック・ジャガー、ペット・ショップ・ボーイズのメンバー、ケリー・オズボーンらが足を運び、クリスチャン・ディオールのクリエイティブ・ディレクターによって世界中のファッション誌を賑わせている、という噂は聞いたことがあるのだけれど、恥ずかしながら音源はついぞ聴いたことがなかったのだ。こんな絵本の熊みたいな名前のバンドなんて……といった感じで。

しかし、オアシスやプライマル・スクリーム、ティーンエイジ・ファンクラブ、リバティーンズを世に送り出したアラン・マッギー(ポップトーンズ主宰)の秘蔵中の秘蔵で、プロデュースはオアシスやニュー・オーダー、ヴァーヴなどを手がけたオーウェン・モリスと聞けば、ライブに足を運ばないわけにはいかないのだ。

さて、ステージに登場した5人は、いきなりバックステージにあったスポンサーなどから贈られた花束を持ってきて客席に投げまくった。フロントマンはガリガリの体型に金髪を逆立て、遠目にはセックス・ピストルズのジョニー・ロットン(ジョン・ライドン)にそっくり。サイドギターはクラッシュのポール・シムノンのような容貌。うーん、これが「ピストルズとクラッシュの融合」なのだろうか、なんて思っていたら、演奏が始まった曲はガチンコのUKパンク。リバティーンズやレイザー・ライトのような洗練されたパンクではなく、70年代の本当のパンクなのだ。

しかも、ステージングも70年代を彷彿とさせるもので、口に含んだ水を客席にまき散らしたり、差し入れられた発泡酒を飲みまくったり、マイクスタンドを倒したり、「スペースシャワーTVからのプレゼントだよ」と贈られた花を全部引っこ抜いて客席に投げたりなど、VTRでしか見たことのないピストルズやクラッシュ、ラモーンズやジョニー・サンダースなどを生で観ている不思議な感覚に包まれた。最後はフロントマンが客席にダイブしていたし。

気になったのは、レオナルド・ディカプリオをさらに太らせたようなベースと、1人で違う路線を行っているリードギター。ベースはとにかくよくしゃべる。リーダー兼スポークスマンのような感じで、好き勝手に動くボーカルとサイドギターに合わせながらも、上手くまとめていたのだ。そして、リードギターは寡黙で汗くさそうな職人風で、ちょっと黄ばんだ(ように見える)白いシャツを腕まくりし、ニコリともせずギターを弾いていた。「パンクを奏でるクラプトン?」と思っていたらタバコを吸い始めた。こりゃまんまなのだ(笑)。

ぼくにとっては音源を聴かないで足を運んだ初めてのライブだったのだけれど、心に残るメロディーラインも何曲かあったし、いろんな意味で楽しめたのだ。ただ、ボーカルの声量のなさにはイライラしたけど。先日観たアークティック・モンキーズと比べると、音楽としてはアークティックのほうが良かったけど(アレックス・ターナーの声は本当にすばらしかった)、ステージングはパディントンズの上。“子供がロック・スターの真似しちゃった”みたいな感じで中途半端にマイクスタンドを倒したりギターを投げたアレックスは、彼らから学ぶところが多いだろう。楽しいショーを無料で提供してくれたBARKSに感謝したいのだ。

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