柔道全日本男子チーム、5月にグレイシー柔術と合同練習。

2006/04/13 18:12 Written by コジマ

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来年の世界柔道選手権、そして2年後の北京五輪に向け、現在東京都多摩市で合宿を行っている柔道全日本男子チーム。合宿の練習が11日に公開されたのだけれど、その席上で斉藤仁監督は、5月にブラジルで行う強化合宿でグレイシー柔術の門下生と合同練習することを明らかにしたのだ。寝技に特化したグレイシー柔術の技術を取り入れようという試みだ。

グレイシー柔術とは、講道館柔道の海外普及員であった前田光世(栄世)がブラジルで伝授した柔道・柔術を、エリオ・グレイシーが体系化したもの。日本でもPRIDEなど総合格闘技の試合に出場しているエリオの三男ヒクソンや六男のホイス、甥の子供であるヘンゾやハイアンなどが有名なのだ。グレイシー柔術をはじめ、最近PRIDEのリングを席巻しているアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ(ブラジリアントップチーム)やバンダレイ・シウバ(シュートボクセアカデミー)らのブラジリアン柔術の特徴は、打撃と優れた寝技なのだ。

全日本チームのブラジル合宿は、5月中旬からリオデジャネイロとサンパウロで2週間を予定しており、合同練習でグレイシー柔術の門下生を招くよう交渉中なのだとか。これまで相撲やレスリングなどの異種格闘技の技術吸収に積極的だった斉藤監督は、「グレイシーと練習したい。いろんなことに挑戦できるのは今年しかないから」(サンケイスポーツより)と、グレイシー柔術の技術を取り入れることにも前向きのようなのだ。

そもそも、柔道は柔術の1流派。明治時代に嘉納治五郎によって体系化・スポーツ化した講道館柔道として創立され、講道館四天王の1人である西郷四郎(会津藩家老・西郷頼母の養子で富田常雄の小説「姿三四郎」のモデル)らが警視庁武術大会で柔術諸派を破って優勝したことによって警察が正課科目に採用。以降、全国に広まったのだ。

グレイシー一族に柔道(柔術)を伝えた前田光世は、米国時代に異種格闘技戦を行ったため講道館から破門されている(死後に七段を贈られたけど)。その前田の技術を受け継ぐエリオは、1951年にブラジルで講道館柔道の木村政彦七段と加藤幸夫五段と対戦したのだ。加藤との対戦は2度行われ、引き分けのあと絞め技でエリオが一本勝ちを収めたけど、木村との対戦では腕がらみ(キムラロック)で意識を失いセコンドが試合をストップした。これは、エリオにとって生涯唯一の敗戦だった。

最近では、柔道出身の吉田秀彦がホイスと対戦し、1戦目は袖車絞めで吉田の勝利、2度目の対戦は引き分けに終わっている。こうした因縁がある柔道とグレイシー柔術の交流は、格闘技ファンにとって非常に興味深いのだ。

外国選手の変則的な寝技に苦戦しているという日本勢。五輪3連覇の野村忠宏選手(ミキハウス)も「寝技に強い選手もいるから、いい経験になる」と前向きなので、ぜひとも格闘技界を震かんさせた秘伝の技術を体得してほしいのだ。間違っても打撃技を盗まぬように……。

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