音楽誌「CROSSBEAT」、ミュージシャンの選んだ映画ベスト50を特集。

2006/03/20 15:36 Written by コジマ

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ビートルズが出演した「ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」(63年、リチャード・レスター監督)以来、切っても切れなくなってしまったロックと映画の関係。ロック映画は今までどんなものがあったか、そして、お気に入りのミュージシャンはどんな映画が好きなのか……。そんな疑問に答えるべく、音楽専門誌「CROSSBEAT」が最新5月号で「ミュージシャンの選んだ映画ベスト50」として、ミュージシャンのお気に入り映画、そしてロックと映画の関係を追った特集を掲載しているのだ。「ベスト50」というわりには順位を付けていないのだけれど、オアシスのリアム・ギャラガーやコールドプレイのクリス・マーティン、マリリン・マンソンに至るまで、お気に入りの映画を披露している。

セックス・ピストルを描いた「NO FUTURE A SEX PISTOLS FILM」(00年、ジュリアン・テンプル監督)や、ラモーンズの内情を描いた「END OF CENTURY」(04年、ジム・フィールズ、マイケル・グラマグリア監督)、元テレヴィジョンのリチャード・ヘルを描いた「ブランク・ジェネレーション〜リチャード・ヘル&ザ・ヴォイドイズ〜」(79年、ユリ・ロメル監督)、ポーグスのシェイン・マガウワンを描いた「シェイン―THE PORGUES:堕ちた天使の詩」(サラ・シェアー監督)のほか、今年もカート・コバーンの最後の2日間にインスパイアされた映画「ラストデイズ」(05年、ガス・ヴァン・サント監督)や、インディーバンドを描いた「DIG!」(04年、オンディ・ティモナー監督)が公開されるなど、近年、音楽を題材にした映画が熱いのだ。

さて、その「ミュージシャンが選んだ映画ベスト50」。まず、オアシスのリアム・ギャラガーは、ザ・フーのアルバム『四重人格』を映画化したモッズ、そして青春映画の傑作「さらば青春の光」(79年、フランク・ロッダム監督)を挙げているのだ。この映画は制作総指揮と脚本がザ・フーのピート・タウンゼント、メンバー全員が音楽を担当し、若き日のスティングも登場するなど、内容だけでなくスタッフもロックな映画。ミュージシャンに限らず、ちまたの音楽好きもこの映画をフェイヴァリットに挙げる人は多いのだ。リアムは選考理由を「音楽、カルチャー……俺が育ってきた生い立ちに似てるんだ。ちょっとだけな」としている。ギャラガー兄弟もモッズキッズだったのだろうか。しかし、「育ってきた生い立ち」って(笑)。また、ベースのアンディ・ベルはケビン・コスナーとホイットニー・ヒューストンが出演した「ボディーガード」(92年、ミック・ジャクソン監督)を選んだ。

コールドプレイのクリス・マーティンは、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(85年、ロバート・ゼメキス監督)、「アニー・ホール」(77年、ウディ・アレン監督)と「ライフ・イズ・ビューティフル」(98年、ロベルト・ベニーニ監督)の3本をお気に入りとして挙げ、「最高の作品」と絶賛。ほかにも「2001年宇宙への旅」(68年、スタンリー・キューブリック監督)を「あの映画ほど美しい映像は他にはない」としている。さすが奥さんがハリウッド女優なだけある? もちろん、奥さんのグウィネス・パルトロウが主演し、オスカーを獲得した「恋に落ちたシェイクスピア」(98年、ジョン・マッデン監督)も「いい映画だよ!」としているのだ。

そして、「ハード・キャンディー」(99年、ダーレン・スタイン監督)や「ボウリング・フォー・コロンバイン」(02年、マイケル・ムーア監督)、「パーティ★モンスター」(03年、フェントン・ベイリー監督)、「サラ、いつわりの祈り」(04年、アーシア・アルジェント監督)に出演し、「チャーリーとチョコレート工場」(05年、ティム・バートン監督)の主演と制作を画策していた(ジョニー・デップの出演により断念)というマリリン・マンソンは、日本映画の「オーディション」(00年、三池崇史監督)を「僕らの時代屈指の傑作と呼べる」、「『ローズマリーの赤ちゃん』(68年、ロマン・ポランスキー監督)や『セブン』(95年、デヴィッド・フィンチャー監督)なんかと比肩するくらいのクオリティを持った作品だ」と絶賛。このほかに「アメリカン・サイコ」(00年、メアリー・ハロン監督)と「8 1/2」(63年、フェデリコ・フェリーニ監督)を挙げている。うーん、マンソンのパブリック・イメージを激しく反映しているなあ。ちなみに、「ローズマリーの赤ちゃん」の舞台は、ジョン・レノンが射殺されたニューヨークのダコタ・ハウスなのだ。マンソンは今後も映画活動を活発に行っていくようで、まずは「不思議の国のアリス」の著者ルイス・キャロルを描いた「Phantasmagoria - The Visions of Lewis Carroll」という作品で監督・主演を務めるのだそう。ロリコンだったキャロルが愛したアリス役に、“フランス人形のようなモデル”リリー・コールを起用することでも話題を集めているのだ。さらに、これから制作される「Up to the Ground」という映画でキアヌ・リーヴスとの共演も噂されている

そのほかのミュージシャンが挙げた映画は以下の通り(カッコ内は制作年と監督)。

▽エコー・アンド・ザ・バニーメンのウィル・サージェント 「Withnail & I」(86、ブルース・ロビンソン、DVD日本未発売) ▽ライフハウスのジェイソン・ウェイド 「エターナル・サンシャイン」(04、ミシェル・ゴンドリー) ▽ディアーズのマレイ・A・ライトバー 「ブレードランナー」(82、リドリー・スコット)▽ガービッジのシャーリー・マンソン 「サンセット大通り」(50、ビリー・ワイルダー)、スティーヴ・マーカー&ブッチ・ヴィグ 「ブルーベルベット」(86、デヴィッド・リンチ)、デューク・エリクソン 「ミリオンダラー・ベイビー」(05、クリント・イーストウッド)、「ストレイト・ストーリー」(99、デヴィッド・リンチ) ▽モビー 「デッドマン・ウォーキング」(95、ティム・ロビンス) ▽マイ・ケミカル・ロマンスのジェラルド・ウェイ 「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」(80、ジョージ・ルーカス)、レイ・トロ 「レイダース 失われたアーク《聖櫃》」(81、スティーヴン・スピルバーグ) ▽シャーロット・ハザレイ(ex.アッシュ) 「俺たちニュースキャスター」(04、アダム・マッケイ)、「アメリ」(01、ジャン=ピエール・ジュネ)、「ブレードランナー」、「スター・ウォーズ」(77、ジョージ・ルーカス) ▽ザ・フューチャーヘッズのロス・ミラード 「汚れた顔の天使」(38、マイケル・カーティス) ▽ザ・コーラルのジェームズ・スケリー 「上意討ち 拝領妻始末」(67、小林正樹)、ポール・ダフィー 「タクシードライバー」(76、マーティン・スコセッシ) ▽ザ・プロディジーのキース・フリント 「ジェイコブス・ラダー」(90、エイドリアン・ライン)、「さらば青春の光」、マキシム・リアリティ 「スカーフェイス」(83、ブライアン・デ・パルマ)、リアム・ハウレット 「スカーフェイス」、「007/ムーンレイカー」(79、ルイス・ギルバート) ▽ティアーズのブレット・アンダーソン 「空軍大戦略」(69、ガイ・ハミルトン) ▽ザ・サブウェイズのビリー・ラン 「ハッカビーズ」(04、デヴィッド・O・ラッセル) ▽ジュニア・シニアのシニア 「クリスチーネ・F」(81、ウルリッヒ・エデル) ▽アスリートのケアリーウィレッツ 「ゴッドファーザー」(72、フランシス・フォード・コッポラ)、「マグノリア」(99、ポール・トーマス・アンダーソン) ▽サンズ・アンド・ドーターズのデイヴィッド・ゴウ 「チャイナタウン」(74、ロマン・ポランスキー) ▽サム41のデリック・ウィブリー 「マグノリア」 ▽フューネラル・フォー・ア・フレンドのマットデイヴィス 「素晴らしき哉、人生!」(46、フランク・キャプラ) ▽ポータスタティックのマック・マッコーハン 「2046」(04、ウォン・カーウァイ) ▽ザ・マジック・ナンバーズのミッシェル・ストッダー 「ズーランダー」(01、ベン・スティラー) ▽グッド・シャーロットのジョエル・マッデン 「スカーフェイス」 ▽ザ・デパーチャーのデヴィッド・ジョーンズ 「ドニー・ダーコ」(01、リチャード・ケリー) ▽ベン・フォールズ 「スリング・ブレイド」(96、ビリー・ボブ・ソーントン) ▽フロム・オータム・トゥ・アシューズのベンジャミン・ペリー 「或る夜の出来事」(34、フランク・キャプラ)、フランシス・マーク 「ファンタスティック・プラネット」(73、ローラン・トポール&ルネ・ラルー) ▽ヨ・ラ・テンゴのアイラ・カプラン 「LOS OLIVIDADOS」(50、ルイス・ブニュエル) ▽スティーヴン・マルクマス 「がんばれ!ベアーズ」(76、マイケル・リッチー)、「ボールズ・ボールズ」(80、ハロルド・ライミス) ▽ステレオフォニックスのケリー・ジョーンズ 「ニュー・シネマ・パラダイス」(89、ジュゼッペ・トルナトーレ) ▽システム・オブ・ア・ダウンのダロン・マラキアン 「タクシードライバー」 ▽トータスのジョン・マッケンタイア 「地球に落ちて来た男」(76、ニコラス・ローグ) ▽エイジアン・ダブ・ファウンデイションのチャンドラソニック 「エターナル・サンシャイン」、「21グラム」(03、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ)、「華氏911」(04、マイケル・ムーア)、「スーパーサイズ・ミー」(04、モーガン・スパーロック) ▽カラシのソルヴィー 「ニューヨーク1997」(81、ジョン・カーペンター) ▽ロングウェイヴのスティーヴ・シルツ 「ゴッドファーザー」 ▽ティーンエイジ・ファンクラブのノーマン・ブレイク 「真夜中のカーボーイ」(69、ジョン・シュレシンジャー) ▽タヒチ81のグザヴィエ・ボワイエ 「大人は判ってくれない」(59、フランソワ・トリュフォー) ▽TVオン・ザ・レディオのタンデ・アデビンプ 「アルファヴィル」(65、ジャン=リュック・ゴダール)

みなさんの好きなミュージシャンはいましたか? お気に入りの映画というのは、その人の趣味や志向を表しているのだ。また、同誌では「ロック的映画セレクション」で、「イージー・ライダー」(69年、デニス・ホッパー監督)や「トレイン・スポッティング」(96年、ダニー・ボイル監督)などのロック映画を紹介している。ぼくの大好きな「24アワー・パーティー・ピープル」(02年、マイケル・ウィンターボトム監督)や「バンドワゴン」(96年、ジョン・シュルツ監督)が入ってるのには好感が持てるけど、「NO FUTURE〜」や「ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ」(01年、ジョン・キャメロン・ミッチェル監督)などが入っていないのには不満があるのだ。あと、“ロック的映画”なのに「8 Mile」(02年、カーティス・ハンソン監督)が入っているのはなぜ!?

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