U2が主要2部門含む5冠、第48回グラミー賞授賞式開催。

2006/02/10 04:58 Written by コジマ

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48回目となるグラミー賞が8日(日本時間9日)、米ロサンゼルスのステーブルズセンターで開催されたのだ。今年は主要3部門を含む最多8部門にノミネートされ完全復活を果たしたマライア・キャリーと、同じく8部門ノミネートのカニエ・ウェスト、ジョン・レジェンドの3人に注目が集まったのだけれど、年間最優秀アルバム部門と年間最優秀楽曲部門の主要2部門を含むノミネートされた5部門すべてで受賞したU2が最多受賞者となったのだ。結局、最多ノミネートの3人はそれぞれ3部門を受賞し、主要4部門の受賞はジョン・レジェンドの最優秀新人賞のみとなった。各部門のノミネートはこちらを参照。

5部門にノミネートされながら、マライア・キャリー、カニエ・ウェスト、ジョン・レジェンドの陰に隠れていたダークホース、U2が実力を見せつけた。昨年のLive8を含む政治活動も、選考者であるアカデミー会員たちの記憶に刻まれていたのだろう。年間最優秀アルバム賞(『ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム』)、年間最優秀楽曲賞(「サムタイムズ・ユー・キャント・メイク・イット・オン・ユア・オウン」)に加え、最優秀ロック・デュオ/グループ(同)、最優秀ロック・ソング(「シティー・オブ・ブラインディング・ライツ」)、最優秀ロック・アルバム(『ハウ・トゥ〜』)の各賞を受賞。気が付けば、ノミネート全部門で賞を受け、今年の最多受賞者となったのだ。

年間最優秀楽曲賞の受賞コメントで、トレードマークのサングラスに黒の革ジャンを着たフロントマンのボノは、
「この部門で受賞できるとは思ってなかった。『サムタイムズ〜』はアルバムのなかでもすばらしい曲。(アルバムタイトルにある)“アトミック・ボム”とは誰のことを指しているのか、多くの人たちに訊かれたよ。原子爆弾のようだった父のことだって言ってきたけど、これからはそれはやめよう。素晴らしい瞬間をくれた優秀な父に感謝する。こんな才能を与えてくれた父のボブに捧げたい」
と発言。傲慢でオペラとクリケットが大好きだったという亡き父へ、素直な気持ちを表した(ちなみに、このお父さんの最期の言葉は「ファック・オフ」だったそう)。また、最優秀ロック・アルバム賞の受賞の際には、グリーン・デイのビリー・ジョー・アームストロングとともにプレゼンターを務めたグウェン・ステファニーの大きな臨月のお腹に、ボノがキスをしていたのだ。

今年のグラミー賞は一部で「マライア・キャリーのためのグラミー」と囁かれるほど復活した彼女への期待が高まっていたのだけれど、最優秀女性R&Bボーカルと最優秀R&Bソング(ともに「ウィー・ビロング・トゥゲザー」)、最優秀コンテンポラリーR&Bアルバム(『ジ・イマンシペーション・オブ・ミミ』)の3部門の受賞にとどまったのだ。それでもステージでは他を圧倒し、「ウィー・ビロング・トゥゲザー」に続いて聖歌隊を率いた「フライ・ライク・ア・バード」を熱唱。その存在感を見せつけた。

そのマライアのほか、シェリル・クロウやグウェン・ステファニーら強豪がひしめいていた最優秀女性ポップ・ボーカル部門と、同じくマライアやシェリル・クロウ、グウェン・ステファニーのほかフィオナ・アップルやポール・マッカートニーまでノミネートされていた最優秀ポップ・ボーカル・アルバム部門は、米FOXチャンネルのオーディション番組「アメリカン・アイドル」出身のケリー・クラークソンが受賞したのだ。

今年最初の表彰となった最優秀女性ポップ・ボーカル賞は、最優秀男性ポップ・ボーカル、ビヨンセとともに最優秀R&Bデュオ/グループの2部門を受賞したスティービー・ワンダーと、5部門にノミネートされたアリシア・キーズにより発表され、黒いドレスを着た受賞者のケリーは涙を流しながら、
「信じられない。泣いちゃって上手く話せないわ。本当に感謝しています。レーベルやプロデューサー、エンジニアに感謝しています。そしてお母さんありがとう、大好き」
と、感激のコメントをしていたのだ。

その後、彼女は真っ赤なドレスに着替えてステージ立ち、「ビコーズ・オブ・ユー」を感激の涙をにじませながら熱唱。最優秀ポップ・ボーカル・アルバム賞の受賞の際には、興奮しすぎてグラモフォン(トロフィー)ではなく自分のハンドバッグをみんなに見せていたという、お茶目な一面も披露したケリー。「アメリカン・アイドル」放送時から見守って?いたウォール真木も感慨深いだろう。それにしても、プレゼンターのアリシア・キーズの衣装がすてき過ぎだったのだ。5部門ノミネートながら1部門も受賞できなかったのは残念だけど。

主要部門では、年間最優秀レコード賞をグリーン・デイ(「ブールヴァード・オブ・ブロークン・ドリームス」)が、最優秀新人賞をジョン・レジェンドが受賞した。グリーン・デイのフロントマン、ビリー・ジョー・アームストロングは、
「このレコードが出てもうすぐ2年だよ。ちょっと緊張しているように見えるかもしれないけど、全くその通りだ。これに関わってくれたみんな、ありがとう」
とコメント。また、新人賞とともに最優秀R&Bアルバム賞(『ゲット・リフテッド』)と最優秀男性R&Bボーカル賞(「オーディナリー・ピープル」)も受賞したジョン・レジェンドは、
「(「オーディナリー・ピープル」は)ぼくにとって特別な曲。最初はブラック・アイド・ピーズのために書いたのだけど、「自分でやってよ」と言われてぼくで歌ったんだ。カニエありがとう。ぼくたちの音楽を信じてくれてありがとう。それがヒットにつながったんだ。ピースをみんなに」
と、女優のジェニファー・ラヴ・ヒューイットとともにプレゼンターを務めたブラック・アイド・ピーズとの秘話を明かしたあと、兄貴分であるカニエ・ウェストへの感謝の気持ちを述べたのだ。

そのカニエ・ウェストは、マライア・キャリー、ジョン・レジェンドとともに最多8部門にノミネートされながらも、マライアと同じく主要部門での受賞はなく、最優秀ソロ・ラップ賞(「ゴールド・ディガー」)、最優秀ラップ・ソング賞(「ダイアモンドは永遠に」)、最優秀ラップ・アルバム賞(『レイト・レジストレーション』)の3賞の受賞にとどまった。大きなサングラスに白いジャケット、赤いシャツ、黒の革手袋といった出で立ちで臨んだ最優秀ラップ・アルバム賞の受賞の際には、「THANK YOU LIST」と大書されたアンチョコを取り出し、神様、ジョン・ブライアンツ、U2……とリストにある名前を次々に挙げ、それぞれに感謝の言葉を述べた。また、ライブではかねてから話題だったジェイミー・フォックスとのコラボレーションを披露。おもちゃのマーチのような衣装とダンスで観客を沸かせたのだ。

そのほか、ぼくが大好きなザ・ホワイト・ストライプスは、最優秀ポップ・デュオ/グループ賞は逃したものの、『ゲット・ビハインド・ミー・サタン』が最優秀オルタナティヴ・アルバム賞を受賞。この部門と最優秀ロック・デュオ/グループ部門にノミネートされていたフランツ・フェルディナンド、3部門ノミネートのフー・ファイターズ、初のグラミーに期待がかかったジャック・ジョンソン、最優秀ニューエイジ・アルバム部門にノミネートされていた喜多郎は受賞を逃した。うーん、フランツはブリット・アワードに期待なのだ。ダンス分野ではケミカル・ブラザーズが2部門を受賞。また、エレキギターの名器、レス・ポールの生みの親、90歳のレス・ポールが最優秀ポップ・イストゥルメンタルと最優秀ロック・インストゥルメンタルの2部門で受賞している。

また、上記以外のライブパフォーマンスも大盛り上がりだったようで、最優秀ポップ・コラボレーション賞を受賞したゴリラズとマドンナのライブを皮切りに、凝った演出に定評があるコールドプレイ(ノミネート3部門で受賞を逃す)、弾き語りからだんだんバックバンドが入って盛り上がったジョン・レジェンド、最優秀新人賞にノミネートされていたシュガーランド、最優秀ソロ・ロック・ボーカル賞を受賞したブルース・スプリングスティーン、U2は2曲目にメアリー・J・ブライジとのコラボレーションを披露。ボノとメアリーが手を取り合いながら歌う姿に感動なのだ。

41歳差のコラボレーションが話題となり、「ア・ソング・フォー・ユー」で最優秀ポップ・コラボレーション賞にノミネートされたジャズ界の大物、ハービー・ハンコックと2000年の最優秀新人賞受賞者のクリスティーナ・アギレラも、ジャジーなライブで観客を魅了。最優秀男性カントリー・ボーカル賞を受賞したキース・アーバンと最優秀カントリー・コラボレーション賞を受賞したフェイス・ヒルもアコースティックなコラボレーション・パフォーマンスで会場を沸かせた。

4部門にノミネートされながらも惜しくも受賞を逃したポール・マッカートニーもライブを行い、ピアノを弾きながら「ファイン・ライン」を披露したかと思えば、「ちょっとロックしてみようか」とベースを手にし、ビートルズ時代のナンバー「へルター・スケルター」を熱唱。スタンディングオベーションで称賛されたのだ。また、「ナム/アンコール」で最優秀ラップ/ソング・コラボレーション賞を受賞したジェイ・Zとリンキン・パークのライブでは、ラップの途中で「イエスタデイ」が流れ、ここでもポールが登場。ラップとポール・マッカートニー。本当にスーパーコラボレーションなのだ。

そして、ライブの目玉だった伝説のファンク・バンド、スライ&ザ・ファミリー・ストーンのトリビュートライブでは、ジョス・ストーン、ジョン・レジェンド、ヴァン・ハント、デヴィン・リマ、マルーン5、シアラ、ブラック・アイド・ピーズのウィル・アイ・アム、エアロスミスのスティーヴン・タイラーとジョー・ペリー、ロバート・ランドルフと、ジャンル・世代を超えたメンバーが集結。そして最後には、金髪モヒカンにでっかいディオールのサングラス、銀のコートを着たスライ&ザ・ファミリー・ストーンのリーダー、スライ・ストーンが登場。いやあ、こんなコラボレーション、グラミーじゃなきゃ観られないのだ。そもそもグラミーじゃなければスライ・ストーンも出演しなかっただろうし。

最後は、ハリケーン被害に遭ったニューオーリンズへ向けて、ドクター・ジョン、エルビス・コステロ、ブルース・スプリングスティーンらによるトリビュートライブが行われ、今年のグラミー賞授賞式は幕を下ろしたのだ。

この授賞式のもようは、2月12日にWOWOWで完全版が放送される予定。また、グラミー賞の公式サイトShow Web siteで一部の写真や動画がチェックできるので、WOWOWに加入してない人や放送が待ちきれない人はぜひ。


☆おもな受賞リスト (完全版はこちらでどうぞ)

●年間最優秀レコード賞(Record Of The Year)
「ブールヴァード・オブ・ブロークン・ドリームス」 グリーン・デイ

●年間最優秀アルバム賞(Album Of The Year)
『ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム』 U2

●年間最優秀楽曲賞(Song Of The Year、カッコ内はソングライター)
「サムタイムズ・ユー・キャント・メイク・イット・オン・ユア・オウン」 U2(U2)

●最優秀新人賞(Best New Artist)
ジョン・レジェンド

●最優秀女性ポップ・ボーカル賞(Best Female Pop Vocal Performance)
「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」 ケリー・クラークソン

●最優秀男性ポップ・ボーカル賞(Best Male Pop Vocal Performance)
「フロム・ザ・ボタン・オブ・マイ・ハート」 スティービー・ワンダー

●最優秀ポップ・デュオ/グループ賞(Best Pop Performance By A Duo Or Group With Vocal)
「ディス・ラヴ」 マルーン5

●最優秀ポップ・コラボレーション賞(Best Pop Collaboration With Vocals)
「フィール・グッド・インク」 ゴリラズ feat. デ・ラ・ソウル

●最優秀ポップ・イストゥルメンタル賞(Best Pop Instrumental Performance)
「キャラヴァン」 レス・ポール

●最優秀ポップ・インストゥルメンタル・アルバム賞(Best Pop Instrumental Album)
『アット・ディス・タイム』 バート・バカラック

●最優秀ポップ・ボーカル・アルバム賞(Best Pop Vocal Album)
『ブレークアウェイ』 ケリー・クラークソン

●最優秀ダンス・レコーディング賞(Best Dance Recording)
「ガルヴァナイズ」 ザ・ケミカル・ブラザーズ feat. Q-ティップ

●最優秀エレクトリック/ダンス・アルバム賞(Best Electronic/Dance Album)
『プッシュ・ザ・ボタン』 ザ・ケミカル・ブラザーズ

●最優秀トラディショナル・ポップ・ボーカル・アルバム賞(Best Traditional Pop Vocal Album)
『ジ・アート・オブ・ロマンス』 トニー・ベネット

●最優秀ソロ・ロック・ボーカル賞(Best Solo Rock Vocal Performance)
「デヴィルズ・アンド・ダスト」 ブルース・スプリングスティーン

●最優秀ロック・デュオ/グループ賞(Best Rock Performance By A Duo Or Group With Vocal)
「サムタイムズ・ユー・キャント・メイク・イット・オン・ユア・オウン」 U2

●最優秀ハードロック賞(Best Hard Rock Performance)
「BYOB」 システム・オブ・ア・ダウン

●最優秀メタル賞(Best Metal Performance)
「ビフォア・アイ・フォアゲット」 スリップノット

●最優秀ロック・インストゥルメンタル賞(Best Rock Instrumental Performance)
「69フリーダム・スペシャル」 レス・ポール&フレンズ

●最優秀ロック・ソング賞(Best Rock Song、カッコ内はソングライター)
「シティー・オブ・ブラインディング・ライツ」 U2(U2)

●最優秀ロック・アルバム賞(Best Rock Album)
『ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム』 U2

●最優秀オルタナティヴ・アルバム賞(Best Alternative Music Album)
『ゲット・ビハイド・ミー・サタン』 ザ・ホワイト・ストライプス

●最優秀女性R&Bボーカル賞(Best Female R&B Vocal Performance)
「ウィー・ビロング・トゥギャザー」 マライア・キャリー

●最優秀男性R&Bボーカル賞(Best Male R&B Vocal Performance)
「オーディナリー・ピープル」 ジョン・レジェンド

●最優秀R&Bデュオ/グループ賞(Best R&B Performance By A Duo Or Group With Vocals)
「ソー・アメイジング」 ビヨンセ&スティービー・ワンダー

●最優秀トラディショナルR&Bボーカル賞(Best Traditional R&B Vocal Performance)
「ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム」 アレサ・フランクリン

●最優秀アーバン/オルタナティヴ賞(Best Urban/Alternative Performance)
「ウェルカム・トゥ・ジャムロック」 ダミアン・マーリー

●最優秀R&Bソング賞(Best R&B Song、カッコ内はソングライター)
「ウィー・ビロング・トゥゲザー」 マライア・キャリー

●最優秀R&Bアルバム賞(Best R&B Album)
『ゲット・リフテッド』 ジョン・レジェンド

●最優秀コンテンポラリーR&Bアルバム賞(Best Contemporary R&B Album)
『ジ・イマンシペーション・オブ・ミミ』 マライア・キャリー

●最優秀ソロ・ラップ賞(Best Rap Solo Performance)
「ゴールド・ディガー」 カニエ・ウェスト

●最優秀ラップ・デュオ/グループ賞(Best Rap Performance By A Duo Or Group)
「ドント・ファンク・ウィズ・マイ・ハート」 ザ・ブラック・アイド・ピーズ

●最優秀ラップ/ソング・コラボレーション賞(Best Rap/Sung Collaboration)
「ナム/アンコール」 ジェイ・Z feat. リンキン・パーク

●最優秀ラップ・ソング賞(Best Rap Song、カッコ内はソングライター)
「ダイアモンドは永遠に」 カニエ・ウェスト(D・ハリス、カニエ・ウェスト)

●最優秀ラップ・アルバム賞(Best Rap Album)
『レイト・レジストレーション』 カニエ・ウェスト

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