英国の放送局BBCが6日、2006年注目のミュージシャンベスト10「Sound of 2006: The Top 10」を発表したのだ。「Sound of〜」は毎年、BBCニュースのウェブサイトで100人以上の音楽評論家や放送関係者にその年にブレークしそうなミュージシャンを選んでもらうもので、2004年はキーン（1位）、フランツ・フェルディナンド（2位）、レイザー・ライト（4位）の活躍を予想、昨年はブロック・パーティー（2位）やカイザー・チーフス（5位）がランクインするなど、その正確性には定評があるのだ。

今年のランキングの前に、まず昨年の順位を見てみると、

1.　ザ・ブレイヴリー
2.　ブロック・パーティー
3.　カノ
4.　ザ・ゲーム
5.　カイザー・チーフス
6.　KT・タンストール
7.　ザ・デッド60S
8.　ザ・ディアーズ
9.　トム・ヴェック
10.　ザ・マジック・ナンバーズ

うーむ、フジロックやサマーソニックに来るほど日本でもブレークしたザ・ブレイヴリーやブロック・パーティー、カイザー・チーフス、ザ・マジック・ナンバーズはもとより、Qアワードでベスト・トラック賞を受賞したKT・タンストールや、日本ではなじみが薄けど本国の英国でブレークしているザ・デッド60Sなどを予想するあたりはさすがなのだ。しかし、Sound of 2005の公式サイトでも述べているように、昨年最も売れたシングルで「ドント・チャ」が7位に入ったプッシーキャット・ドールズや後半に彗星のごとく現れたアークティック・モンキーズの登場は予想できなかったようで、ほかにもサブウェイズやルースターなどもランク外だったのだ。

そして、今年のランキングは、

1.　コリンヌ・ベイリー・レイ（Corinne Bailey Rae）
2.　クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー（Clap Your Hands Say Yeah）
3.　ザ・フィーリング（The Feeling）
4.　プランB（Plan B）
5.　ギルモッツ（Guillemots）
6.　スウェイ（Sway）
7.　クリス・ブラウン（Chris Brown）
8.　マルコス・ヘルナンデス（Marcos Hernandez）
9.　クブ（Kubb）
10.　ジ・オートマティック（The Automatic）

うーん、正直「これは！！」というミュージシャンがいないのだけれど、最注目なのが2位のクラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー（CYHSY）。昨年6月にセルフタイトルのアルバム『クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー』で全米デビューしたインディーバンドなのだけれど、レーベル契約がないためCDを1枚1枚郵送していたのだ。にもかかわらず、インターネットや口コミで人気が高まり米国では異例の大ヒット。これを受けて、欧州ではレーベルによる争奪戦が繰り広げられ（最終的にブロック・パーティなどが所属するウィチタが獲得）、シングル「イズ・ディス・ラヴ？」は英音楽誌NMEのシングル・オブ・ザ・ウィークを獲得したのだ。インターネットを介したプロモーションは英国のアークティック・モンキーズも成功しており、音楽業界の新たな戦略として、レディオヘッドなども可能性を探っているのだとか（CYHSYやアークティック・モンキーズは商業的な意図でインターネットを利用したわけえはないけど）。

音楽誌ロッキング・オンの2月号にフロントマンであるアレック・オンスワースへのインタビューが掲載されているのだけど、
「最初はアメリカ国内はもちろん、世界中の人達に1枚ずつ送ってたんだ（笑）。でも楽しかったのは最初の2日だけで、すぐに誰かが手伝ってくれないと無理、っていう状況になって、母さんがすぐ近くに住んでたから手伝いに来てもらって、母さんが全部CDを封筒に詰めてたんだよね（笑）」
という微笑ましいエピソードを紹介しているのだ。日本では、デビューアルバムがV2レコードより今月18日に発売。国内盤の初回限定は、ライブ音源の付いた2枚組なのだ。また、24日には東京の渋谷クラブクアトロで単独ライブが行われる予定。しかし、なんで1位じゃないんだろう。

その1位に選ばれたソウルシンガーのコリンヌ・ベイリー・レイも、なかなかではあるのだ。カイザー・チーフスと同じ英国リーズ出身の26歳で、昨年11月にシングル「ライク・ア・スター」をリリースしたばかり。アコースティックでしっとりとしたこの曲を聴く限り、ノラ・ジョーンズやビョークなどが好きな人には心地よいのではないだろうか。自身も「ビョークやマッシヴ・アタックにインスパイアされた」と語っているそうな。ザ・ニュー・マスターサウンドというファンク／ジャズバンドの楽曲にも参加しており、3月にはデビューアルバムが発売されるのだそう。

「ニュー・コールドプレイ」といわれているクブやストレートなブリティッシュ・ロックを奏でるジ・オートマティックなど、ランクインした他のミュージシャンの曲も公式サイトで試聴できるので、気になる人はチェックなのだ。