来年公開の映画「白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々」。

2005/11/21 22:28 Written by コ○助

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「ベルリン、僕らの革命」や「ヒトラー 〜最後の12日間〜」など、ドイツの優れた作品が日本でも相次ぎ公開されているなりが、来年お正月第2弾として公開される「白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々」も見逃すことができない作品なりよ。今年開催された第55回ベルリン国際映画祭では最優秀監督賞と最優秀女優賞、全キリスト協会コンペ部門最優秀賞の3冠を獲得。ドイツのほかの映画祭や世界中の映画祭で受賞しているほか、アカデミー賞の外国語映画部門にドイツ代表として出品され、ノミネートは確実とも言われているなりね。これから話題になることも多くなりそうなので、どのような作品なのか、ご紹介しておくことにするなり。

「白バラの祈り」は、30万人の戦死者を出したスターリングラードの大敗以降、崩壊へと向かっていたヒトラー独裁政権末期のドイツが舞台。「打倒ヒトラー!」の文字を町中の壁に書き、郵便やビラで国民に「自由」を呼びかけた「白バラ」と呼ばれる地下組織が存在したなりが、この「白バラ」の主要メンバーだったハンス・ショルとゾフィー・ショルの兄妹にスポットを当てた作品が「白バラの祈り」なりよ。創作の物語ではなく、すべて実在の人物、事件を忠実に映画として再現した作品で、マルク・ローテムント監督はドイツの歴史家たちと共に約1年半に渡り、当時の関係者への取材や考証を行い、丁寧に「白バラ」の活動と、ゾフィー・ショルについて描いているなりね。

ゾフィー・ショルという人物は日本ではあまりなじみがないなりが、ドイツの大手テレビ局が「時代を超えた偉大なドイツ人」とのアンケートを取った際に、第4位にランクインしたというエピソードがあるほど、ドイツ人にとっては偉人的な扱いの人物なりよ。また、ドイツには190の学校にゾフィー・ショルの名前が付けられた学校が存在し、学校教育の中でもレジスタンス運動をしていた人物として必ず学ぶのだというなり。独裁政権下で「すべての人は平等」と訴え続けた勇気やその人道性が高く評価されているなりね。

作品の中では、ゾフィー・ショルがゲシュタポに逮捕されてから処刑されるまでのわずか5日間が描かれているなりが、この作品のスタッフが世界で初めて「発見」した当時のゲシュタポの尋問記録をもとに脚本が書かれているため、かなり真実に近い描写となっているというなり。尋問記録はソ連にベルリンが制圧された際にすべてモスクワへと運ばれ、その後東ドイツの手に渡り当局が保管をしていたようなりが、「自由」を叫ぶゾフィー・ショルの尋問内容は当時の東ドイツには相応しくないと、保管庫の奥のほうに眠っていたのだとか。そしてベルリンの壁崩壊などの社会混乱の中で放置されていたものを、ようやくこの作品のスタッフが「発見」。陽の目を見ることになったなりね。

まだ公開まで時間があるなりが、マルク・ローテムント監督と主演のユリア・イェンチが来日、記者会見が行われたので、その様子を簡単にお伝えしておくなり。


・マルク・ローテムント監督
「ベルリン国際映画祭では上映前に20分間のスタンディング・オベーションを受けた。受賞と共に喜びは倍増だ。ベルリンのあと、いろいろなところで賞をもらい、これ以上ない展開だ」
「白バラのメンバーは最初からヒーローだったわけではなく、ごくごく普通の人たちだ。取り調べを受ける過程で強さを身につけ、結果的には英雄になった。そのことを伝えたかった」

・ユリア・イェンチ
「ベルリンの観客は厳しいと事前に聞かされていたので、受賞は嬉しかった」
「この映画はナチスを描いたドイツ映画と捉えるのではなく、人間の勇気といった普遍的なテーマとして捉えてくれたのが嬉しい」

☆公開情報
タイトル:白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々
公開時期:2006年お正月第2弾
劇場:シャンテシネほか全国順次公開予定
配給:キネティック

☆ストーリー
1943年、ミュンヘン。ヒトラー独裁政権も末期的な局面を迎え、ヒトラーの虚勢による戦争勝利の掛け声とは裏腹に、人々はスターリングラードでのドイツ軍大敗の噂をしながら見えない明日に怯えていた。そんな中、ヒトラーの政策を批判し、戦争終結を叫ぶ地下組織的なグループが存在していた。彼らは"白バラ"と呼ばれ、定期的にビラを配り、壁に「打倒・ヒトラー」のスローガンを書く非暴力的なレジスタンス活動を繰り返していた。

兄のハンスと共に、白バラに参加していたゾフィー・ショルは、その日も、白バラのメンバーのいる秘密の印刷所に向かった。そこでは次に配布する第6号ビラが作られており、みなで郵送の段取りを話し合った後、ハンスが余ったビラをミュンヘン大学構内に配置すると言い出した。仲間は危険だと主張し、彼を止めたが、結局、ハンスとゾフィーのコンビで決行することになった。悲劇の運命はここからスタートした。

翌日、2月18日、彼らは授業中のひと気のない大学構内の数ヶ所に、ビラを積み置きしていった。最後の余ったビラをゾフィーが階上からバラ撒いたとき、終業のベルが鳴り、多くの学生が教室からあふれ出した。互いにビラを手に取り、恐怖に慄く群集に混じって逃げようとする二人は用務員の通告によりゲシュタポに逮捕された。

二人の取調べが開始され、長いキャリアを持つベテランの尋問官モーアがゾフィーの担当になった。翌日、ビラの草稿を書いた疑いで仲間のクリストフが逮捕された。ゾフィーは恐怖を押し殺し、冷静さを必死で装いながら、自分が無実であることを説得する。その心理的駆け引きの巧みさに一時は、彼女の無実を信じかけたモーアだったが、やがて動かぬ証拠が自宅から発見される。罪を逃れられないことを悟ったゾフィーは一転して、反撃に出る。自分は信念によって行動し、それを誇りに思っていると。長いキャリアを持ち、同じ年頃の息子を東の前線に送り出していたモーアは、21歳のゾフィーに心を動かされ、脅威にも感じていた。なぜ、こんな若く、賢い女性が自ら人生を台無しにしようとするのか? 彼は仲間の情報提供と引き換えに、ゾフィーに逃げ道を用意する。しかし、その行為は自分自身を裏切ることに他ならない。ゾフィーはモーアの申し出を拒否し、自らの運命を封印する……。

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