今から15年ほど前のこと。「高いモノが良い」「オシャレなレストランが良い」といった価値観が蔓延していたバブル時代が終焉を迎え、世間の「食」に対する価値観がガラリと変わり始めたポストバブルの時代。そんな時代に颯爽と現われたブームが「もつ鍋ブーム」だったなりよね。安い、美味い、ボリューム満点のもつ鍋は、ポストバブルという時代の空気に実にマッチした料理だったと言えるなりね。
当時、コ○助はまだ中学生くらいだったので、どうしてもお酒がセットになってしまう美味しいもつ鍋屋さんに行ったことは無かったなりが、ブームに乗って自宅調理用のもつ鍋セットなども販売されるようになったことから、自宅ではよく食卓にもつ鍋が登場していたのをよく覚えているなりよ。それまで絶対に自宅では出てくるようなメニューでは無かったにも関わらず、当時はもつ鍋の頻度が高かったこと、高かったこと。それだけでも、ブームの凄さをヒシヒシと感じていたなりね。
ただ、ブームはブーム。ブームが終わってしまえば、本当に美味しい店以外は徐々に淘汰されていき、少なくとも東京には「もつ鍋専門店」を謳う店はそれほど多くは無くなってしまったなりよ。コ○助はもともと臓物系の料理が大好物なので、リアルタイムにもつ鍋ブームを体感できなかった悔しさから、「大人になったら絶対にもつ鍋を食べに行くんだ!」と決意していたのに、実際に大人になった頃にはブームは終焉。そのため、なかなか実際に足を運ぶことができずにいたなりよ。ところがここ数年、もつ鍋を取り巻く状況が一変。再び東京を中心にもつ鍋の話題や、もつ鍋専門店オープンの話題を耳にするようになってきたなりよ。まだ大きなブーム、とまでは行かないなりが、徐々にもつ鍋の人気が再燃してきている感じは受け取れるなりね。
今回のもつ鍋人気の火付け役と言われているのは、東京・恵比寿に店を構えるもつ鍋専門店「博多もつ鍋 蟻月」。東京のもつ鍋愛好家の間ではすでに「超」の付くほどの有名店なりが、2003年末の開店以来、何人ものタレントなどがテレビや雑誌で紹介していることがきっかけとなり、今や爆発的な人気となっているなりよ。予約は2週間先までいっぱいという、大人気店なりね。ちなみに、「蟻月」はネット通販で「お取り寄せセット」の販売も行なっているなりが、1か月あたり4,000万円も売り上げるほどの人気なのだとか。「予約が取れないならお取り寄せを」という層と、東京以外の地域で「蟻月」の評判を聞きつけた層がこぞって購入しているというなり。コ○助も以前から「蟻月」には行ってみたいと思っているものの、なかなか行く機会に恵まれず。やはり一度は行っておかねばならない店なり。
また、以前のもつ鍋ブームの際に、東京・銀座の超人気店として有名だった「もつ鍋元気」という店が、1994年3月の閉店以来、11年の沈黙を破って東京・六本木に再び店を構えることになったなりよ。コ○助も「もつ鍋元気」の名前だけは知っていたなりが、聞くところによると当時は銀座のOLのアンテナにビビビッと引っかかり、連日行列ができていたのだとか。そんな「もつ鍋元気」の復活が、近年のもつ鍋ブームへの燃料投下となることは間違いなさそうなりね。
専門店とは異なるなりが、東京・京橋にある宮崎地鶏の創作料理店「日本橋ぼんぼり 京橋店」では、看板メニューとして鶏、豚、牛の内臓を使ったもつ鍋の提供を始めるなど、専門店のもつ鍋とはまたひと味違った「亜流」のもつ鍋も登場しているなりよ。この店で提供されているもつ鍋は、宮崎地鶏の地頭鶏(じどっこ)のハツと砂肝、和牛のスジと小腸、豚のホルモンと胃袋の計6種類をミックスしたものなのだとか。そんな臓物パラダイスなもつ鍋、食べたこと無いなり(笑)。これは美味しそうなりね……。「蟻月」や「もつ鍋元気」ともども、実際に食べに行ってみなければ。
こうしたブームの再燃は、肉料理をもう一度見直すきっかけとなったBSEや鳥インフルエンザなどの問題が大きく影響しているのは言うまでも無いなり。ジンギスカンブームも、これらの問題がきっかけで羊肉に目が向いてのもの。それまであまり見向きもされなかった種類の肉が再評価されたという意味では、なにもBSEや鳥インフルエンザは悪いことだけでは無かった……と、前向きに考えることもできそうなりね。もつ鍋にジンギスカン。牛肉の輸入が全面的に解禁されるまでの一過性のブームに終わることなく、ひとつの料理のジャンルとして定着すると願いたいなり。