今年の4月に前ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が帰天されたというニュースは、まだ私たちの記憶に新しいですね。その数週間後に第265代の教皇として就任したのが、現ベネディクト16世。ドイツ出身の教皇は1927年生まれの78歳で、歴代教皇の中でも最高年齢で選出された人物でもあります。
ベネディクト16世(本名:ヨーゼフ・アロイス・ラッツィンガー氏)は以前から神学者としても有名。しかも話せる言語がドイツ語のみならず、イタリア語、英語、フランス語、ラテン語……と、かなりのインテリジェンスぶりです。多くの言語を駆使して世界中を訪問した前教皇とは、その語学力のみならず、その伝統的なキリスト教会思想や方針を持ってしても、大変多くの共通点があるといわれています。
さて、その保守派のベネディクト16世に関してですが、ちょっと興味深い話題が。なんと世界中の子供や大人に親しまれている「ハリー・ポッター」に対して、批判的な意見を持っているのだとか。同シリーズは、明日アメリカで第6巻目にあたる"Harry Potter and the Half-Blood Prince" (邦題:「ハリー・ポッターと混血の王子」)が発売されるのですが、その直前に飛び込んできたこのニュース。一体どういうことなんでしょうか。
現教皇がッ様のコメントを示したのは数年前にさかのぼります。とあるドイツ人作家に対して個人的に送った手紙の中でのことだったそうです。この作家、ドイツ人のガブリエル・クーピー氏は2003年に「ハリー・ポッター」を批判する自著を発表。その1冊を当時まだ枢機卿だったベネディクト16世に送ったところ、彼からお礼の返事が届いたのです。
その手紙の中で、ローマ教皇は同氏の著書を「意義深い」と評価し、さらに「『ハリー・ポッター』シリーズが、成長過程にある子供の心をゆがませる」というクービー氏に賛同すると延べたそう。その後の手紙のやり取りでも同様の見解を示し、さらに彼の意見をクービー氏が公開することにも承諾したそうです。
それが数年の時を経て、「ハリー・ポッター」シリーズ最新作発売の直前というタイムリーな今を狙い、クービー氏自身がウェブサイトでローマ教皇からの手紙の抜粋を発表。それがメディアの知るところとなり、ニュースとして大きく報道されるまでになったワケですね。
それにしても、何故ベネディクト16世は同シリーズを「キリスト教徒としての精神が十分育っていない子供たちにとって潜在的危険性をもつもの」とまで言い切り、厳しく批判しているのでしょう。魔女や魔法使いが出てくるからでしょうか。
対照的にヴァチカン法王庁にいたっては、「子供の頃に想像の世界で、妖精や魔法使いと遊んだ記憶があるのは当たり前のこと」と数年前にコメントしています。なのでベネディクト16世の発言は、彼がローマ教皇に就任する以前のものとはいえ、まったく反対の見解となってしまいました。
ローマ法王といえば、キリスト教徒にとってその発言力は想像を超える偉大さがあります。今後もしかしたら熱心なクリスチャンの家庭で、親が子供から「ハリー・ポッター」の本を取り上げてしまうなんてことが起こるかもしれませんねぇ。