今から10年ほど前、アフリカの小国ルワンダで起こった痛ましい事件をご存知の方はいらっしゃるでしょうか。1994年の春から夏にかけて、この国の多数派民族であるフツ族が少数派のツチ族を大量虐殺。たった数ヶ月の間に少なくとも80万人が犠牲になりました。
ツチ族とフツ族は、もともとは話す言語も同じで比較的身近な部族でした。しかし生活形式の違いから、ふたつの間には次第に貧富や階級の差が生まれ、ひずみが出来上がったといわれています。
この背景には、この国を実質的に植民地としていた欧米諸国の思惑も黒い影を落としていました。ルワンダが独立するまで欧米諸国は少数民族のツチ族を優遇し、王政もツチ族が主体となっていたのです。それに反発したフツ族がクーデターで王政を打倒。1962年、この国の独立と同時に、今度はフツ族が優勢に立ちました。
その後も国内部の民族対立は続き、1994年の4月、フツ族出身のルワンダ大統領が何者かに狙撃されるという事件が勃発。これが発端となり長年の対立が激化する形となり、国民の10人に1人が殺害されるという、歴史上まれにみるジェノサイドとなったのです。この虐殺は実に組織的に行われたため、何年も前から計画されていたというのが今では一般的な見解です。
さて以上のような歴史的事実を題材にして、2004年に公開された映画「ホテル・ルワンダ」。暴徒と化したフツ族の手からツチ族を守るため、自分が支配人として働くホテルに人々をかくまった男性の物語です。彼の行動で、1200人ものツチ族が救われたそうです。
この「ホテル・ルワンダ」は、多くの映画祭で絶賛され、この年のアカデミー賞でも3部門にノミネートされます。国こそ違えど、まるで「シンドラーのリスト」のようなストーリーを淡々と語るこの作品は、近年珍しい社会派の名作として評判になりました。
これだけ話題性が高ければ、日本でももちろん公開されるはず……。ところがこの作品が今、日本で配給先が決まらずにいるというから驚きです。内容が重いのがネックになってしまったのか、事実上のお蔵入りの状況なんだそうです。せっかく多くの国で賞賛を浴びている映画なのに、なんとも寂しいことです。
しかし作品を待ち望んでいる日本の映画ファンは少なくありません。そして彼らはこの映画の劇場公開を目指して、行動を起こし始めたそう。有志が集まり
「『ホテル・ルワンダ』日本公開を求める会」を発足させ、署名活動などの運動を展開していく予定だそうです。ソーシャルネットワークの
Mixi でも
コミュニティが出来上がったりしていて、すでに活動の輪は広がっている模様。
社会性の強い作品は、確かに多くのライト・ハートな娯楽映画とは一線を越しています。しかしだからこそ、この「ホテル・ルワンダ」の価値とテーマを日本でも公開してくれる配給元が見付かるのを望まずにはいられませんねぇ。