2002年から始まった米FOXチャンネルの「アメリカン・アイドル」。元はイギリスで大ヒットした「ポップアイドル」("Pop Idol")のアメリカ版としてスタートしたリアリティ番組です。
まず全米から応募してくる素人たちから1ヵ月以上もかけて、30人の候補を選抜します。その後は毎週与えられたテーマからそれぞれが1曲選んで歌声を披露。それを観た視聴者が翌日までに電話で投票をし、最低票となった1人が脱落させられるのです。このプロセスを毎週続けて、残った最後の1人が晴れてプロのアーティストとしてデビュー出来るという仕組み。こうして選ばれた初代チャンピオンのケリー・クラークソンはデビュー・アルバムがヒット・チャート1位になり、その後もセカンド・アルバムも好調な売り上げ。「アメリカン・アイドル」から誕生した歌手は、確かに真のアイドルとして成長しているのです。
それにしてもアマチュアが歌手を目指して才能を競う……。ある程度の世代なら覚えている日本の「スター誕生」と一緒じゃないですか。アメリカでも以前「スター・サーチ」("Star Search")という同様の番組がありましたが、それの二番煎じにしては社会現象になるほどの人気のある「アメリカン・アイドル」。一体これはどうしてなのでしょう。
その秘密は、いわゆるリアリティ番組にみられるエンターテイメント要素が巧みに組み込まれているからだといえます。単なる「のど自慢大会」かと思いきや、一般から選ばれた人々が生き残りをかける「サバイバル」要素や、参加者のキャラクターをクローズアップする構成が加わっており、これがなかなかの面白さ。アメリカ人の好奇心をガッチリつかみ込んでしまったのです。
また、参加者が歌うのが火曜日で、その結果の脱落者が決まるのが水曜日。丸1日間も誰が生き残り、誰が落とされるのかが判らないという、ジックリと時間をかけた焦らし方は賢いというかなんというか。しかも水曜日の番組はライブ放送。勝ち抜いた歌手たちが少なくなればなるほど、毎シーズン緊張の連続です。
さらに参加者のパフォーマンスも面白いのですが、特に毎回視聴者が注目し話題とするのは、それぞれの参加者に対してコメントをするジャッジたちなのです。英国バージョンでも出演していた音楽プロデューサーのサイモン・コーウェル、同じくプロデューサーのランディ・ジャクソン、そして自身もシンガーとして過去に一世を風靡したポーラ・アブドゥルの3人は、それぞれ性格がバラバラ。アブドゥルは唯一の女性として優しくほめるタイプ。ジャクソンはそれよりは厳しく意見を言いますが、それでもまだポジティブな言葉も出てきます。しかしもう1人のコーウェルが恐ろしいほどの毒舌。予選から下手な応募者をバッサバッサと斬りおとして来たその辛らつなコメントが、この「アメリカン・アイドル」を観続けてしまう醍醐味でもあるのです。
今4シーズン目の真っ只中なのですが、残っているのが本日の時点で7人。戦いは白熱化しています。最初は素人っぽかった対戦者たちも、回を重ねるごとに上手くなってきて、さらに顔つきまでプロっぽく引き締まってきました。実際ファッション・センスも含め、見た目がかなり変わっちゃう人も多く、その変身ぶりがまたまた話題になることも。
ところで視聴者だけでなく、次代のスターを目指す若者に対してもこの番組は登竜門として認識され注目されてきました。初回シリーズの応募が1万人だったのが、今回はなんと5万人までに膨れ上がったそうです。その数字だけを見ても、この番組のがどれだけ成長したのかが伺えます。
このままの人気で番組が続けば、またどんどん実力のあるスターが輩出されるであろう「アメリカン・アイドル」。今後も目が離せませんね。