欧米で広がるウジ虫療法。

2005/03/21 12:53 Written by Maki K Wall@駐米特派員

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いろいろな感染症を引き起こす細菌のひとつに「黄色ブドウ球菌」と呼ばれるものがあるそうです。ふつう細菌が原因の化膿性炎は、ペニシリンなどの抗生物質の投薬で治療可能なのですが、この黄色ブドウ球菌の中では、厄介な事にペニシリン類のほとんどに耐性がある種類があるんだとか。これは1961年にイギリスで発見され、その後日本にも上陸しました。

この耐性黄色ブドウ球菌のことを一般にMRSA(Methicillin Resistant Staphylococcus Aureus)といいます。MRSAの感染力自体は通常とても弱いので、健康な人が保菌者となっても問題ありません。しかし高齢者や、免疫力が低くなっている状態の病人などには発症しやすいとして、以前から院内感染が問題視されています。

しかしこのMRSA感染症に対しての特効薬として、ここ数年注目されているものがあります。Narinari.comの過去コラムでもちょこっと触れたことがありますが、それはなんとウジ虫を利用した治療方法なのです。イギリス、イスラエル、そしてアメリカではすでにれっきとした「医療器具」として許可されているのです。

ハエの幼虫であるウジ虫はヒトを含む動物の体組織をエサとします。けれども彼らが食べるのは死滅した組織のみ。健康な体細胞には見向きもしないそうです。この生態を利用して、化膿した傷口から死んだ細胞組織だけを効果的に除去するために、ウジ虫を這わせるのだとか……。もちろん、殺菌済みの特別に養殖されたウジ虫だそうですけど。なんだかなぁ(汗)。

このウジ虫療法の効果を調べるために、イギリスで大規模な臨床実験が行われているそうです。今時点で、約600人の患者ボランティアを集めて患部にウジ虫を「投薬」。従来の化膿症治療に比べて、ウジ虫療法の方が、効率良く治癒することがわかったなど、なかなかポジティブな結果が出ているとか。

そういえば、ウジ虫療法の他にも昆虫などを利用した医療がいくつかあるそうで。例えば中国ではハチの毒と針をツボに刺して、リューマチなどの治療に使っているそうですし、うっ血した患部の血を取り去るために、ヒルを使う方法は日本でも昔からあるものだそう。

科学的な医療に頼らず、こういった生物の力を借りて病気を直す……。ちょっと最初はギョッとしてしまいますが、もしかしたらあと数年したら、一般的な医療として扱われているかもしれませんねぇ。

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