馬たちの「大脱走」―元競走馬4頭が市街地を疾走。

2004/11/21 07:55 Written by コジマ

このエントリーをはてなブックマークに追加


ぼくはあまり競馬に詳しくはないけれど、勝ってナンボの競走馬の世界はとても厳しいようで、エサ代も稼げないような馬に用はなく、“リストラ”されても繁殖馬や乗馬として“再就職”できる確率はかなり低いのだ。じゃあ、選にもれた馬がどうなるのかというと、みなさんご存知のとおり食用、つまり馬肉になっちゃうのだ。そんなリストラ組の馬たちが、牧場から脱走して市街地を走り回ったのだ。

場所は、おいしい馬肉で有名な宮崎県は都城市。20日の昼前に、「馬4頭が道路を走っている」と市民から相次いで110番通報があったのだ。走っていたのは、食用として北海道から仕入れられたばかりの3〜4歳の元競走馬4頭。同市にある牧場から柵を乗り越えて脱走し、交通量の多い国道や市役所近くの住宅街を逃走。約1時間半後、都城署員20人に捕獲されたのだ。馬が暴れることはなく、けが人や事故はなかったとのこと。

目撃者の1人は「接客していたら、店の前を馬が通り、驚いた」そう。そういや、東京農業大学に通っていた友達が「授業中ぼんやり外を眺めてたら、馬が通ってびっくりした」なんて言ってたけど(東京農大では敷地内で馬を放し飼いにしてるのとのこと)、それ以上にシュールな光景だったのだろう。

ぼくは桜肉が大好きで、飲み屋で「馬刺し」の表示があると迷わず注文してしまう(安い飲み屋の馬刺しはあまり美味ではないので避けるけれど)。とくに、甲府駅前にあるほうとうで有名な「小作」で食べた馬刺しは忘れられない味なのだ。そんなある日、東京・新橋のオッサン系飲み屋で馬刺しを食べてると、競馬好きの友達が「オレ、馬肉ってダメなんだ」と告白しだした。そいつ曰く、「馬は頭のいい生き物で、例えば勝たなきゃいけないレースなんかを周りの雰囲気で感じ取るんだ。食用になる馬もわかってるのかもしれない。それを思うと胸がいっぱいになって食べられない」とのこと。一瞬、ぼくも別の友達も馬刺しを眺めつつ気後れしたのだけれど、そんなこと言ったら何も食べられなくなっちゃう。

ぼくは時間にルーズだし部屋はきたないし、だらしなくて偉そうなことなんか言えないけど、命をもらって生きてるってことを心の片隅に置いておくのが大切なんだ、と思うのだ。肉だけじゃなく、野菜だって生きている。なかには落ちてきた実しか食べないという、「究極の菜食主義」の人もいるそうだけど(果物を赤ちゃんになぞらえると、それもまた…)、ほとんどの人が別の生き物の命をもらって生きているのだ。できるだけそのことを確認しようと、家で刺身を食べるときは丸物を買ってきて三枚におろすようにしている。血は出るし、内臓を引き出さなきゃいけないし、はじめは食べる気が半減してしまったけど、今ではすっかり慣れて、さばいたあとに「いただきます」と言うのがぼくのなかで大切な“儀式”(うわっ宗教っぽい)になっているのだ。魚をさばくとき、貝を茹でるとき、子供を横に置いて説明するのも、「命は大切なんだ」という教育の、ひとつの方法なのかも。

それがわかっていても、屠殺場へ連れて行かれる家畜の姿や食用に飼われている犬の目を見ると胸が締めつけられるし、「ドナドナ」が哀しいのには変わりはないのだけど。この逃げた馬たちも食べられちゃうんだもんなあ。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.