トム・ハンクスの新作『ターミナル』が話題に。

2004/06/24 00:35 Written by Maki K Wall@駐米特派員

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この記事は映画のネタバレが含まれる場合がございます。ご了承下さい。

先日お伝えしたベン・スティラー主役の『ドッジボール』には公開直後の週末興行収入ランキングにてトップを奪われたものの、すでに評論家達が最近の一押しと太鼓判を押している映画『ターミナル』。

アカデミー賞受賞者のスティーブン・スピルバーグ(『シンドラーのリスト』他、監督賞)、トム・ハンクス(『フォレスト・ガンプ』他、主演男優賞)、そしてキャサリン・ゼダ・ジョーンズ(『シカゴ』助演女優賞)が共演すると言うだけでも話題性十分じゃないですか。わぁわぁ。

ストーリーは架空の東ヨーロッパの一国から、ニューヨークの空港に降り立った男性ヴィクター(ハンクス)が主人公。なんと彼が機上の人となっている間に彼の祖国がクーデターに巻き込まれてしまします。そしてその結果、国際法で言うところ「国が消滅」…。

無論「事実上存在しない国」のパスポートは無効となり、それを所持するヴィクターはアメリカへの入国を却下されます。さらに、クーデーターの戦火の中にある祖国に帰るわけにも行かず…。空港で足止めをくらった彼は、どこにも行けず、その「閉ざされた空間」で彼が経験するアメリカ。これが彼の目線で描かれているそうです。

しかし、飄々としたヴィクター。こんな苦難にもめげず空港内で仕事を見付け、空港関係者と友情を育み、ロマンスのお手伝いをするまでに。限られた世界の中で一生懸命毎日を過ごしていきます。そしてもちろん彼にも、ほのかな想いをよせるフライト・アテンダンス(ゼダ・ジョーンズ)が登場したり…。彼の身の上に起こったことは大変だけど、映画自体はたぶんハッピーエンドのラブ・コメディのようです。

ところで、この『ターミナル』。空港で何ヶ月間(もしかして何年間!?)も足止め…なんてお話はもちろんフィクションだと思っていたのですよ。しかしなんと、これ実話に基づいたストーリーなんだそう!しかも調べてみたところ、リアルな話のほうはちょっと悲惨…。

1988年、イラクと英国の二重国籍を所持するマーハン・カリミ・ナセリという男性がフランスはシャルル・ド・ゴール空港に降り立ちました。彼はその政治的思想からイランを国外追放され、最初亡命するために英国にやって来たのですが、なんと彼の英国パスポートと国連から発行された難民証明書は盗難にあっていたのです。もちろん英国は入国を拒否、なぜかド・ゴール空港行きの飛行機に彼を押し込んでしまいます。

フランスでも同様の扱いを受け、ナセリ氏は仏入国の他、加えて他国へ出国することも禁じられてしまいました。そしてその後数年に渡るフランス移民局や国連への働きかけも空しく、彼はその建物内に「投獄」されてしまうのです。

晴れて1995年に国連の本部があるベルギーの政府が、難民証明書のコピーを条件付で再発行することを約束。しかし、その条件とは彼がベルギーで生活することでした。イギリス行きを長年望んでいたナセリ氏は、これを拒否。なんとその後も空港で暮らすことを望んだのです。閉ざされた空間で何年も生活していた彼の精神はいつのまにか病んでしまっており、まともな判断力さえも失ってしまっていたのでした。

さて今でも空港生活を続けるナセリ氏。ドゴール空港の第一ターミナルのカフェにて、自分のスーツケースを脇に静かにコーヒーをすすりながら読書にふける男性。そんな彼の姿は時が経つにつれて有名になり、すでにフランスでは彼を題材にした映画『Tombes du Ciel』(邦題『パリ空港の人々』)が作られたそうです。

空港関係者は彼を温かく見守っているそうです。「きっとナセリ氏の病んだ心は、一生ここから己が離れることを許さずにいるだろう」と一人の関係者は語っているとか…。

なんだか物悲しいお話です。とはいへ、今回の『ターミナル』は先ほども申しましたようにハッピー・エンドのはず。日本公開予定はまだまだ先のようですが、日本の劇場でご覧になるちゃんすがあれば、ぜひぜひ。

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