上映中止の映画「コンクリート」公開へ。

2004/06/02 05:56 Written by コジマ

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1988〜99年に東京都足立区で起こった「女子高生コンクリート詰め殺人事件」を題材としたため、発表後さまざまな反響を呼び、公開前に異例の上映中止となった映画「コンクリート」(中村拓監督)。数々の映画館が上映を拒否するなか、ようやっと公開が決定したようなのだ(7月3〜9日ロードショー)。

名乗りをあげたのは、東京・渋谷にあるマイクロカフェシアター「アップリンク・ファクトリー」。インディーズ系の映画やトークショー、写真展などを行うスペースだそうな。ぼくはココを訪れたことはないのだけれど、同劇場のホームページを見れば分かる通り、ビルの5階ということもあり映画館というには厳しいほどの狭さと設備ながら、そういったサブカルチャーが好きな人たちの間では結構人気なのだそうな。新宿にある「ロフトプラスワン」みたいなところなのかな。

こうしたさまざまな反響があるなか、「アップリンク・ファクトリー」代表の浅井隆さんは、「コンクリート」公開に当たって次のように語っている(すべて同劇場ホームページより)。
「映画を観てもいない人や、あるいは観た人でもいいですが、その人たちの抗議によって一度決まった映画の上映が中止されるようなことはあってはならないことです。これは、表現の自由を侵害する問題です」
「(DVDやビデオは発売されるようだが)映画館のスクリーンで観るという“映画”としての存在は、このままでは、匿名の抗議で抹殺されそうですので、こういった事があってはならないと思い、僕は、アップリンク・ファクトリーで上映することを決めました」
また、米国で議論を呼んだ「パッション」(メル・ギブソン監督)や「華氏911」(マイケル・ムーア監督)などを引き合いに出し、表現の自由の侵害を強調している。そして「今回アップリンク・ファクトリーでの上映を決めたからには抗議や脅かしがあっても上映中止という“自主規制”をするつもりはありません」と決意を表明しているのだ。

ただ、作品を見た感想は「こういった話題になったので多分興行として成立するだろう、で、アップリンクの“美意識”にかなうのかといえば、正直なところアップリンク・ファクトリーで上映するに相応しい作品とは言いかねる点も有りました。ただ、今回は、内容の善し悪しに関してはこれからこの作品を観る観客に委ねることにします」としており、単なる“義憤”による公開決定ではないようなのだ。

表現の自由も大切だけど、その表現によって傷つく人が出るのもとても悲しいこと。また、こうした映画を公開することによって、戒めに思う人もいれば、模倣犯が出てくる可能性もある。これはとても難しい問題なのだ。女子高生コンクリート詰め殺人事件が起きた当時、ぼくは中学1年生。それまでの人生で一番衝撃的な事件だった。その後、酒鬼薔薇事件や昨日も小学6年生が同級生の首を切って殺す事件など、さらに衝撃的な少年犯罪が後を絶たない。公開が決定したのなら、「コンクリート」がこうした犯罪の抑止力になることを願うばかりなのだ。

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