自民党・野中広務元幹事長が引退を表明。

2003/09/10 04:39 Written by コジマ

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総裁選で自民党のドタバタが続くなか、「影の首相」とまで言われた野中広務元幹事長が、今季限りで政界から引退することを発表した。政敵を次々に批判して追い落とす「政界の狙撃手(スナイパー)」と呼ばれた野中氏だけど、青木幹雄参院幹事長や村岡兼造会長代理ら“盟友”の裏切りに遭っては、自慢の“ライフル”も下げざるをえなかったのだ。

野中氏の引退の要因は、青木氏、村岡氏、仲良しの堀内派(宏池会)の堀内光雄総務会長が小泉首相支持にまわったこと。いわば友達に裏切られて哀しくなったというのがホンネかもしれない。記者会見で涙目だったし。急速に発言権が強くなった青木氏との勢力争いに敗れたという見方もある。まあ、“裏切った”各氏は“勝ち目のない戦”をしたくなかっただけだろうが。

橋本派は竹下登元首相や金丸信元副首相に象徴されるように、一人の実力者によって政治を動かしてきたのだけど、その「実力者」である野中氏の影響力が及ばなくなったことは、旧時代の終焉とも捉えられている。小泉純一郎首相は何かと批判されてもいるが、派閥や実力者の力が弱まるほどの国民人気を勝ち得て「党内改革」が達成されつつあることを考えると、やはり、日本にとって必要な人物だったことは間違いない。

さて、人によっては悪の権化のような言われ方をされている野中氏だけど、彼の退陣によってさまざまな問題も生じてくる。要点をまとめると、

・野中氏がニラミを利かせていたのでまとまっていた党内が分裂する

・「小泉体制」を批判する勢力がなくなることによって、現体制が暴走しても止める手立てがなくなる(民主党他では不安)

・「タカ派」である安倍晋三官房副長官や石破茂防衛庁長官らの「日本版ネオコン」が急速に実力を付け、対北朝鮮・中国関係が悪化し日本の軍国化が進む(野中氏は自衛隊海外派遣の慎重派、対北・中外交の「ハト派」勢力の代表者だった)

などが懸念される。

こう考えてみると、政権さえ取らなければ、野中氏の存在は必要なものだったような気がする。強力な保守あっての中道、改革だということがシミジミと感じられるのだ。そのバランスが崩れてしまった今、小泉首相を中心とした勢力の「セルフコントロール」が問われることになる。

野中氏の“捨て身の攻撃”がどう影響するのか、総裁選の戦況が答えとなるのだ。

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