米博物館で原爆投下の「エノラ・ゲイ」復元展示で思うこと。

2003/08/19 05:00 Written by コジマ

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今年も8月15日がやってきた。広島の折鶴焼失事件にかこつけてアホな騒ぎをしている連中は置いといて、終戦記念日を「忌まわしい日本の終焉」「平和で豊かな日本の幕開け」の記念日だと言う人たちがいるけど、ぼくが幼い頃に周りの人に聞いたり本を読んだりした限りでは、「あの日は何の感慨もなかった」とか「『ああ、まだ生きなきゃいけないのか』って思ったよ」なんて意見が多かった。軍国主義はイヤでも、「忌まわしい」なんてまったく思ってなかった様子なのだ。

まあ、どちらにせよ、実際に戦前を肌で感じることのできないぼくらがとやかくいう問題ではないんじゃなかろうか。戦前と戦後を比較できないのだから。太平洋戦争を賛美するわけでもなく罪悪感を持つでもなく、多角的に見て今後に役立てればいいんじゃないかなと思う。太平洋戦争に対するコンプレックスで、養老孟司氏の『バカの壁』(新潮新書)ではないが、日本人の思考がそこで停止しているような気がするのだ。

米国の博物館で、広島に人類初の原子爆弾を投下した機体、B29「エノラ・ゲイ」が、完全復元されて展示されることとなったそうだ。asahi.comによると、1995年にその国立スミソニアン航空宇宙博物館でエノラ・ゲイの一部を展示した際、「(原爆の使用は)日本の即時降伏につながり、米軍と日本人に多数の犠牲者が出るはずだった本土決戦を不要にした」との解説を付けたという。

写真を見て、その機体の輝きにぞっとした。功罪は置いといて、紛れもなく多くの人々の命を奪った飛行機である。1945年8月6日に、テアニン島から広島に向けて飛び立ったエノラ・ゲイは、午前8時15分に原子爆弾「リトル・ボーイ」投下し、14万人(±1万人)の命を奪った。その後も多くの人々が後遺症に苦しんでいる。

それから58年。写真でしか見たことのないキノコ雲が14万人の断末魔だけでなく、日本人文化の墓標に見えてしまうのはぼくだけだろうか。

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