日本語ブックレットに含まれるジェイ・ケイ自身による長編ライナー・ノーツは、もはや「ジェイ・ケイ自伝」と呼べそうなほど、当時の出来事が詳細に、時に赤裸々に綴られている。
例えば2ndシングルリリース当時、世間では「ジェイ・ケイはソングライターであって、曲を歌っているのは別の黒人女性シンガーだ」と噂され、ラジオ出演時に問い詰められたことなども振り返っている。このような冗談のようなエピソードを交えながらも、数々の大ヒット作が、相当な傷や葛藤を抱えた難産の末に世に出てきたことを改めて認識させられる内容だ。また、“フリー・ソウル”でもおなじみ、橋本徹氏が渋谷の空気感を交えて記したライナー・ノーツも興味深い内容になっている。
さらにもう一つの目玉である、当時の日本のレコード会社担当者による秘話集も読みどころ満載。初来日公演の際、バンドメンバーのトビー・スミスがライブに間に合わないかもしれないという緊急事態が生じ、その際にあの有名なGというバンドのM氏がサポートメンバーとして急遽アテンドし、リハーサルなども共にしたという衝撃のエピソードも詳細が明かされる。結局トビーが公演に間に合ったため、M氏はライブ出演せず、幻のサポートメンバーとして終わったそうだ。
ジェイ・ケイのライナー、そして日本の担当者の秘話を通して当時を振り返りながら、メッセージ性の高い全楽曲群の歌詞対訳を読み、最新リマスターされた大ヒット曲やデモ音源を聴くことで、いくつもの新しい発見があることは疑う余地もない。