英ニュースサイトのオレンジニュースや英紙デイリー・メールなどによると、変わった家宝を持っているのは、リンカンシャー州ディーピング・セント・ジェームスで暮らすナンシー・ティトマンさん。現在94歳の彼女は以前、母から大事な家宝を譲り受けた。小さな箱に入れられたその家宝は、多少表面が崩れているものの、今なおしっかりと丸い形を留めているホットクロスバン。箱には「1821年3月」という製造日が記されている。
作ったのは、ティトマンさんから5代上のウィリアム・スキナーさん。彼がロンドンでパン屋を営んでいた当時、市民の間でグッド・フライデーに作られたホットクロスバンが「腐らず、特別な治癒力を持つ」ものと崇められていたそうだ。もちろん普通に作られたパンなら、数日経てばカビが生えて食べられなくなるのだが、中には「空気に触れないようパンにニスを塗って」わざと腐らせないように作られたパンもあったという。
ティトマンさんの先祖も、当時のグッドフライデーに加工して家宝のパンを作ったようで、彼女は母から当時の言い伝えを聞き「これがその証明」と譲り受けたとのこと。それからさらに月日は流れ、「ナポレオンが死んだのと同じ年」に作られてから192年経った現在でも、腐らずに形を留めている。パン自体はもはや「化石や石のように固い」といい、口に入れるのは危険なようだが、干しブドウなどが入った独特の香りは「まだする」そうで、未だパンとしての存在感を醸し出しているようだ。
そして、今年も復活祭の祝日が到来。代々受け継がれてきた家宝は箱から大事に取り出され、厳かな雰囲気の中で家族でお祝いをするという。約200年も前に作られたパンが残っているのは「聞いたことがない」と専門家も驚く、ティトマンさんの家宝。今でも形を保ち続けるパンを「誇りに思う」と話す彼女は、今後自分の娘や10歳の孫娘へ譲っていきたいと話しており、家宝のホットクロスバンが一家に務める役割は、まだまだ終わりそうもない。