◎大人になってからでは無意味か
細菌暴露が免疫系に関係するという仮説は、世界各地の都市環境でアレルギー疾患と自己免疫疾患が増加していることを説明できるという。これには、幼少期から抗生物質を使うといった社会的な環境の変化も関与している可能性がある。
Olszak氏らは今回、完全な無菌環境で飼育されたマウス(無菌マウス)と、病気や感染症を引き起こす特定の微生物のみがいない環境で育てられてマウス(SPFマウス)の免疫系を比較した。
その結果、無菌マウスでは肺や大腸にぜんそくや大腸炎に似た炎症が発生しやすい傾向にあった。原因は、人間でもこれらの病気と関連付けられている「iNKT」と呼ばれる細胞が集まっていること。興味深いことに、無菌マウスを生後数週間で細菌にさらしたところ、免疫系が正常になってiNKT細胞の集積が抑制された。しかし、成体期以降、つまり大人になってから細菌にさらしても、こうした変化は見られなかったという。
また仮説通り、出生直後の細菌暴露による保護作用は、長期間にわたって持続することが明らかになった。
Olszak氏らは「今回の研究から、細菌を用いて幼少期に適切な免疫調節を行うことの妥当性が示唆された」と結論。これらの知見を踏まえ、人間を対象とした研究を行うべきと指摘した。
なお、最近だけでも、妊娠中にペットを飼うと子供のアレルギーリスクが低下すること、1歳まで犬と接触した子供は風邪や中耳炎になるリスクが低いことなどが報告されている。これらも細菌への暴露が関与しているのかもしれない。
※この記事(http://kenko100.jp/news/2012/08/01/02)は、医学新聞社メディカルトリビューンの健康情報サイト「あなたの健康百科」編集部(http://kenko100.jp)が執筆したものです。同編集部の許諾を得て掲載しています。