今や世界でも多くの人に知られる存在になったビーティーさんは、1974年にハワイ州で女性として生まれた。ところが、幼い頃から「常に男性でいたいと感じていた」(豪紙デイリー・テレグラフより)彼は、20代でホルモン注射を始めて体を男性化させていき、2002年に性別適合手術を実施。このとき、すでに現在の妻であるナンシーさんと交際しており、彼女が「子宮を摘出していた」と分かっていたため、自身は乳房の切除などは行ったものの、2人の子どもを自分が出産できるようにと、子宮など必要な器官は残したという。
そして、法的に念願の“男性”という性別を手に入れたビーティーさんはナンシーさんと結婚すると、人工授精によって2007年に妊娠。2008年に長女スーザンちゃんを出産すると、2009年に長男オースティンちゃん、2010年に次男ジェンセンちゃんと3人の子どもを授かった。現在はアリゾナ州で5人仲良く暮らしているという一家だが、先日、米放送局CBSの番組「ザ・ドクター」に出演し、近況を語った。
本物の医者が司会を務め、体や健康に関するさまざまな話題を取り上げる同番組。この日は「伝統に捉われない家族」というテーマについて話し合うため、一般家庭とは異なるビーティーさん一家が呼ばれたという。集まった観覧客からは温かい声を受けた一方で、長年ホルモン投与を受けた彼の出産が子どもにどのような影響を与えるのかといった懸念など、幅広い議論が行われた。
そうした中、ビーティーさんは今後の子作りを断念する可能性も示唆。子どもを妊娠するたびに男性ホルモンの投与中断を余儀なくされていた彼は、今後「男性として体を安定させたい」との意向もあり、体に残していた子宮の摘出を検討しているそうだ。
これまで多くの困難を乗り越え、さまざまな希望を実現してきたビーティーさん。しかし、“妊娠パパ”として世間の注目を集めた代償も決して少なくはなかった。繁盛していたというTシャツプリント業の仕事は、彼が有名になって「偏見にさらされ、多くの客を失った」(デイリー・テレグラフ紙より)ために立ちゆかなくなり、今年3月に廃業したという。長い人生、これからもまだ訪れるであろう困難に立ち向かいながらも、ビーティーさんには家族のために本物の“男”となって、大いに頑張って欲しいところだ。