この研究を行ったのは、チチェスター大学でスポーツ心理学が専門のイアン・グリーンリース博士と、マイケル・アイノン研究員。グリーンリース博士らは、大学のサッカー部員の協力で、1つの実験を行った。英紙タイムズによると、その実験は「1週間にわたり、40人のキッカーが1人のキーパーに対し、PK(ペナルティキック)を行う」というもの。ただし、ゴールキーパーは青、黄、緑、赤とユニフォームの色を変え、博士らはキーパーがそれぞれの色を着た時のPK成功率を調べたという。
「それぞれのストライカーは、全部で10本のシュートを放った」(英紙デイリー・メールより)とされ、少なくとも400本(40人×10本)行われたPKの結果、そのゴール率にはハッキリと違いが現れた。最もPKが成功したのは、キーパーの服が緑の場合で75%。次いで青の72%、黄の69%と、軒並み7割前後の成功率となった。しかし、キーパーが赤を着ると、その成功率は54%と、1つだけ極端に数字が下がったという。
研究結果にグリーンリース博士は「赤は、人間が進化学的に危険と反応するため、プレーヤーの気がそがれるのかもしれない」(英紙スコッツマンより)と、理由を推察している。また、赤を着ているキーパー側の心理については「より支配的な感じを得る」と話し、「能力を高めるのかもしれない」(デイリー・メール紙)とも。この研究は4月16日に開かれた、英国心理学会の年次会議で発表されたそうだ。
さらに、グリーンリース博士はこの結果をもとに、W杯の大舞台を控えたイングランド代表のユニフォームも「赤にした方がよい」と提言している。過去にW杯や欧州選手権で、PK失敗による敗退を味わってきたイングランド代表。それだけに、博士は「あらゆる可能性を尽くすなら、手袋や靴にさえ赤を入れる余地がある」としている。
しかし、すでに発表されているイングランド代表のユニフォームは、フィールドプレーヤーのアウェイ用こそ赤だが、ホーム用は白が基調。ゴールキーパーは「ホーム用が緑、アウェイ用が黄色」(タイムズ紙より)と決まっており、今から急にユニフォームの色が赤に変わる可能性は、残念ながら無いだろう。
厳しい舞台となるW杯。各国のユニフォームの色にも注目してみるのも面白そうだ。