事故が起きたのは英ウェストブロムウィッチにあるメンジース高校。同校では、若者向けのアルコールやタバコの危険性を教育する機関のDecca(Drug Education, Counselling and Confidential Advice)を招き、12歳以上のタバコを吸う生徒に対して、1週間分のニコレットを配布する試みを行っているそうだ。
14歳のアイデン・ウィリアムズくんは、過去にタバコを吸ったことがあったが常習性はなかった。そのため、学校からニコレットを配布される対象の生徒ではなかったが、校内でタバコを吸い、学校から指導を受けた友人からニコレット(ガムタイプ)をもらい受けたという。そして何を思ったのか、25分の間に1個2ミリグラムのニコチンを含むニコレット45個を噛んだところぶっ倒れ、胃痛を伴いながら病院に救急搬送されてしまった。
ニコレット45個分のニコチンは90ミリグラムで、これは人気銘柄の「マールボロ・ライト」(ニコチン0.5ミリグラム、タール6ミリグラム)の180本分に相当する。この比較だけでもかなり危険であることがわかるが、ウィリアムズくんは入院してバカなことをしたと思ったものの、そのときは「危険だとは思わなかった」(サン紙より)そうだ。
この一件にウィリアムズくんの両親は学校に激怒。「息子がバカなことをしたのはわかっている」「学校が子どもからタバコを排除しようとすることには反対ではない」(同)とした上で、「潜在的に危険のある薬物を子どもたちに与えていること、そしてそれを保護者に話していないことは問題なのではないか」(同)と、両親の知らないところでニコレットの配布が行われていたことに怒り心頭だ。この両親の主張には喫煙抑止団体Ashの代表も賛同しており、子どもに1週間分のニコレットをまとめて配布することは無責任だと、学校側の対応を非難している。
しかし、実際に配布を担当していたDeccaの担当者は「こんな事例は初めて」と困惑気味だ。使用する際の注意事項、分量も生徒には伝えているため、今後はより確実に危険性を周知するよう心がけるという。
英国は2007年に喫煙可能年齢が16歳から18歳に引き上げられたものの、2008年時点で16歳未満の20万人の子どもたちが毎年タバコを吸い始めると言われ、子どものタバコ問題は深刻な社会問題となっている。そのため、国を挙げて対策に乗り出しており、禁煙プログラムを実施する学校自体は珍しくない。今回はその手順が問題なのか、生徒個人の責任の問題なのかを巡る議論へと発展しているようだ。