2009年3月のはじめ、中国・天津市寧河県で暮らす李剛さんは、仲人から1人の結婚候補者を紹介された。相手の女性は名を「張美麗」といい、河北省玉田県人で、李さんが暮らす寧河県にも親戚がいるとのこと。彼女の男性への要求は少なく、「誠実であればそれでいい」と紹介されたのだという。
李さんが興味を示すと、仲人はすぐに相手の「張美麗」を家に連れてきた。「張美麗」はとても美人で気立てがよく、李さんも家族も大喜び。「結婚」は現実味を帯び始める。
その時、李さんは「さぁ、これからゆっくりと愛を育んで……」などと思ったかもしれないが、「張美麗」の家族はすぐに結婚式の日取りを決めるよう要求。李さん家族は焦る相手を不審に思い、念のため「張美麗」の身分証を調べることにした。かつて結婚詐欺の話を聞いたことがあったからだ。しかしながら、李さん家族の心配とは裏腹に身分証は問題なし。李さん家族は安心して結納金の相談を済ませ、3月12日に結婚式を挙げることを決めたという。
しかしながら、李さん側が結納金5万元(約69万円)の支払いを済ませた後、さらに疑問点が出てきてしまった。李さん家族は警察に行き、「張美麗」の素性を調べてもらうよう願い出たものの、調査結果は「該当者なし」。警察もこの一件が詐欺なのかそうでないのか、確証を得ることはできなかった。とは言え、「該当者なし」のままでは李さん家族は安心できない。李さん家族と警察は相談し、予定通り結婚式を挙げさせ、警察は李さんの親戚に成り済まし、現場で確認しようということになった。
3月12日、結婚式は予定通り催された。そこで李さんの親戚に成り済ました警察は調査を開始。すると、いくつもの“怪しい”事実が発覚した。まず、「張美麗」は姓が「張」であるにも関わらず、父親の姓は「劉」。叔父は「李」と名乗ったそうだ。また、家族全員での記念撮影のとき、「張美麗」側の家族は皆、顔を隠すようにうつむき加減であったという。警察はただちに派出所に連絡し、参列者全員の身分を確認するよう指示。結果はすべて「該当者なし」であった。
犯罪だと確証を得た警察が現場に急行したところ、「張美麗」側の参列者は大慌て。その場で一斉に逮捕されたという。調べによると、お金目当てに全員が身分証を偽造しており、結婚後「親族訪問」という名目で「張美麗」が蒸発する算段を練っていたそうだ。事件に関わったとされる8人の容疑者はすでに犯罪を自供しており、法律に基づき処罰が下されることになっている。