この一酸化窒素の生理的作用を世界で初めて解明したのが、ロバート・ファーチゴット博士でした。米のノースウェスタン大学やニューヨーク州立大学などで教鞭をとり、同時に血管を弛緩させる物質の研究に力を注ぎます。冒頭の発見は1986年に実証され、さらにその後、彼の革新的な発見は1998年のノーベル賞生理学・医学賞を筆頭に、科学分野の功労者に与えられる国際的な賞で讃えらることになりました。
研究者として、実に70年以上の経験をもつファーチゴット博士は今年で92歳になったそう。しかし、先日彼の訃報が伝えられたのです。娘であるスーザン・ファーチゴットさんによると、シアトルでお亡くなりになったそうで、医学や薬学に携わる研究者からお悔やみの声が聞こえています。
ノーベル賞受賞にあたり、ファーチゴット博士は、
「いろいろな賞を頂いたことは、もちろん嬉しいことです。しかし受賞したことが私の研究人生における一番の喜び、というわけではないと感じます。実験室で、自分の仮説が正しいという証明が実験で得られた瞬間。この時以上に喜ばしいことなんて、絶対にありえません」
と、語っていたそう。本当に研究と実験の繰り返しという作業を愛していたのでしょう。もしかしたら、天国でも実験室にこもっているのかもしれませんね。