最近、シャンプーのCMを見ていると、黒髪を強調したものが多くなっていることに気づく。「アジエンス」で起用されたチャン・ツィイーもそうだし、シャーリーズ・セロンなど若手ハリウッド女優が出演していた「Lux」も、冨永愛を使って黒髪を前面に押し出している。また、複数のタレントを起用している「TSUBAKI」では、黒髪でないタレントも多く出演しているけど、広告やCMでは色を暗めにしてあまり目立たないようにしているのだ。遅れたカネボウホームプロダクツも和風な新商品「いち髪」を9月に投入する予定で、深津絵里を起用し、こちらも黒髪を強調していくのだとか。
こうした“黒髪回帰”の風潮はどうやって生まれたのか。夕刊フジでは、「社会進出が進み、地位が向上するとともに、日本の女性も自信を持ち始め、欧米人にあこがれる時代ではなくなった。アジア・日本回帰現象が着実に始まっている。イメージキャラクターも、いかに共感を持てるかがキーになる」という、ヘアケア業界のマーケティング専門家のコメントを掲載している。
ぼくの友人で米国や欧州に長く住んでいた人たちに聞いたところ、「日本では欧米人の真似をする人が多いけど、向こうで真似をしていたら、大げさに言えばその人のアイデンティティが疑われる。風潮的に自分の個性を強調することが大切にされているので、欧米に住んでいる日本人は黒髪の人が多い」と、口をそろえて答えた。長い黒髪をきちんと手入れしている女性は、パリの公園でおばさんに呼び止められ、「あなた、なんて綺麗な髪してるの! 本当にうらやましいわ! 私も欲しい!」とほめられたそうなのだ。
しかし、“黒髪回帰”でケアに心を砕いている女性が多いのは、シャンプーやリンスの売り上げから見てもよく分かる。“そのままがよい”とは言っても、女性の労力は減らず、むしろ増大しているようなのだ。まあ、黒髪しろ茶髪にしろ、流行に流されず似合う髪色にしているのが一番なのだけど。