現在フランスは日本食ブームで、特にパリでは、宅配寿司がピザのように当たり前のものになりつつあるのだとか。また、値段や鮮度に不満があるものの、ほとんどの食材がスーパーなどで手軽に調達でき、なんと、パック入りの納豆も冷凍空輸され、冷凍食品として陳列されているそうなのだ。まあ、こうした食材は主に現地にいる日本人が購入するようで、調理法が分からないフランス人はやはり日本食レストランにいかざるを得ないのだ。しかし、人気が出ると、どうしても和食の調理法を知らない人たちまでもが「日本食レストラン」をうたって開店しているのだそう。
こうした“偽”日本食レストラン(コチラのブログを書いているフランス在住の方の間では「ニセジャポ」と呼ばれているそう)の多くは、中国人やベトナム人が経営し、日本食とはほど遠い料理を出しているところがほとんど。しかし困ったことに、夜中も開店していて「本物の和食店」よりも値段が3分の1程度なため、パリっ子には大人気なのだとか。
ところが、現地で真剣に日本料理へ取り組んでいる職人さんにとっては、日の丸を掲げて堂々と「日本食レストラン」という看板を標榜しているのは許せないことだし、ジェトロ・パリ・センターには、「味が違う」「みそ汁が前菜に出てきた」などの苦情が寄せられているのだとか。まあ、ほとんどのフランス人は“本物”か“偽物”か区別が付かないようだけど。
こうした事態をかんがみて、同センターは日仏の有識者12人から成る「日本食レストラン価値向上委員会」を発足。覆面調査員を派遣し、「日本産または同等品質の食材を使っているか」「盛りつけやサービスが日本的か」などの基準で採点する制度を導入することになった。高成績店にはハシを持つ手とサクラをあしらった「本物の日本料理」マークを渡し、店頭に表示することを許可するとのこと。
同センターの中井毅所長は「間違った味覚が日本の味として浸透するのは困る。すしでおなかをこわして日本食イコール危険とのイメージが広がれば、日本ブランドも傷つきかねない」(朝日新聞より)としている。たしかに日本食のイメージを落としかねない危うい状況ではあるのだ。ただ、「日本においしい中華やイタリアの料理店があるように、日本人でなくても立派な日本食は作れる。国籍にかかわらず料理人の励みになってほしい」と言うので、現在「ニセジャポ」と呼ばれている店の経営者や料理人も、認定されて晴れて“本物”になれる可能性もあるのだ。
ちなみにこの「ニセジャポ」、最近は味が向上している店もあるのだとか。しかしねえ、「ありがとう」「サヨナラ」「古い江戸」なんていうネーミングセンスはどうにかしてもらいたいのだ。