なんで200以上も前に死んだ人の心臓が残っているのかというと、ルイ17世の解剖を担当した医師が心臓をハンカチでくるんで持ちだし、アルコールに漬けた後に乾燥させたとのこと。その後心臓はさまざまな人の手にわたったそうだけど、最終的にはサン・ドニ大聖堂に安置されたのだ。
2000年にDNA鑑定が行われたきっかけは、数ある自称者のなかでも最も有名なシャルル・ギヨーム・ノンドルフさん(1845年没)が本物かどうかを確かめるため。このノンドルフさんは、1833年に「オレ様ちゃんはルイ14世だもんね!」と名乗ったのだけれど誰一人相手にせず、イギリスに追放されちゃった人。だけど、あつかましいというかなんというか、彼の子孫は王家の苗字である「ブルボン」を名乗っているそうなのだ。その子孫の1人であるシャルル・ルイ・エドモン・ド・ブルボンさんは、この鑑定結果に「こんなのウソっぱちだ! (検査を行った教授は)オレたちを破滅させようとしているんだ!」と猛抗議中だとか。
ちなみに、ノンドルフさんのDNAは何度検査してもマリー・アントワネットやその親族とは一致しなかったそうな。うーん。
ルイ17世は、革命の足音が聞こえる1789年に兄が死んだことによって王太子となり、父母を処刑され、孤独で陰惨な幽閉生活を送らされた挙げ句に10歳で病死した。「暴君の子として当然の報い」という革命側の市民の呵責ない所業は、すばらしさばかり強調されるフランス革命のダークサイドとして、もっと語られるべきなのではないだろうか。過酷な死の後も体の一部をもてあそばれたシャルル王子。もう二度と世に出ないことを祈るばかりなのだ。