儲け主義を否定する無料音楽配信サイト「mF247」を直撃 その2。

2007/09/21(Fri) 19:56

元ソニー・ミュージックエンタテインメントの社長である丸山茂雄さんが主宰する無料音楽配信サイト「mF247」を直撃しているこの特集。その2は、同サイトのサポートで9月15日に開催された「FirefoxRock Festival '07」の模様や出演アーティストのインタビューなどをご紹介します。(撮影:佐藤 亘)


9月15日に開かれた「Firefox Rock Festival '07」は、ウェブブラウザの「Firefox」などを提供するMozillaの主催で行われた世界的イベント「Mozilla24」内で行われた音楽フェスティバル。会場の「SHIBUYA BOXX」の収容人数は第2会場となったカフェや芝生のテラスを合わせても約1000人ほど。しかし、全世界に向けてストリーミングによる生中継を行ったため、「世界最小のロックフェスティバル」にして「世界最大のロックフェスティバル」というキャッチフレーズがついています。

ライブスペースは2カ所で、芝生のテラスもあってよい感じでした。Firefoxカーまで展示されていて、雰囲気もばっちり。初開催とは思えないほど完成度の高いフェスでした。

フェスのメインである出演者は、少年ナイフ、MARS EURYTHMICS、ミドリ、つしまみれ、QomolangmaTomato、101A、SLUGGER、陣内大蔵、オーノキヨフミ、AJI、吉田直矢・APO、黒色すみれ、marronの13組。どのアーティストも満員の会場を大いに沸かせていたのですが、この中から、メインステージの「Firefoxstage」でライブを行ったQomolangma Tomato、ミドリ、少年ナイフの3組のインタビューとライブの模様をお届けします。


Qomolangma Tomato(チョモランマ・トマト)


メンバー
(左から) 大工原幹雄/ドラム、石井成人/ボーカル、小倉直也/ギター、山中治雄/ベース
2003年に横浜で結成された4人組。地元横浜や横須賀を中心に活動を展開し、昨年はオーディション「サマソニで待つ!〜Stairwayto Summer Sonic〜」でSUMMER SONIC 06への出場権を獲得。ほぼ無名の新人ながら突出したパフォーマンスで500人の観客を集めました。今年は3月にフジテレビ系「FACTORY」に出演したことで話題となり、4月にはファースト・アルバム『チョモと僕は柵(しがらみ)の中』をリリース。2年連続となるSUMMERSONICでは、屋内最大のマウンテンステージへ出演しています。
公式サイト
mf247ページ
MySpaceページ


●2年連続でのSUMMER SONIC出演やアルバム発表、ツアー、テレビ出演などここ数年で一気に知名度が上がったと思うのですが、心境や音楽に対する捉え方の変化などはありますか?
石井成人(以下石井)「うーん、そんな意識はないですね。知名度が上がったという実感はあるけど。それによって変化することはないです」
●サウンドや詞の基盤は変わらないと。
石井「基盤が何かっていうくらい僕は意識していないんで、年を取るごとに歌詞は変わっていくと思います」
●「through your reality」の歌詞は19歳で書かれたそうですが、かなり完成されていますよね。
石井「どうもありがとうございます」
●「Firefox Rock Festival '07」への参加経緯はどういうものだったのでしょうか。
石井「こういうイベントがあるよって聞いて、面白そうなんでOKしました。何か大きいことをやろうとしているなっていうのは感じています。あと、僕も『Firefox』使っているんで(笑)」
●全世界に生中継されて「1億人」が観ているということですが。
石井「ライブってもともと不特定多数を対象としているので、人が多くても少なくてもやることは別に変わるわけではないです」
●「mF247」への参加についてですが、楽曲を無料で提供するということに抵抗がありました?
石井「無料で出すっていうのは、やっぱり最初は抵抗ありました。でも、何か納得するものがあって承諾したんです。理由は忘れたけど(笑)」
●(笑)。「mF247」や「MySpace」、「Last.fm」など、音楽サイトの登場によって何か変化したことはありますか。
石井「メッセージが来ることなんかでファンとのつながりが広がっていることは感じます。ホームページよりもメッセージが来る量が多いですし。『MySpace』などのフレンドリストは基本的に拒否しません」
●懐が広いですね(笑)。ネットの利用で活動の仕方は変わりました?
石井「僕らが活動し始めた頃からネットはあったんで、変化については分かりません。だけど、海外との距離が近くなった気がします。英語のメッセージが来たりとか」
●ネット発のアーティストが増えていますが、そういう人たちについては何か感じるものがありますか。
石井「あんまり気にしてないです。僕たちはライブで表現するだけですから」
山中治雄「やり方の違いだと思います」
石井「でも、いいと思いますよ。そういうのも」
●先ほど海外の話が出ましたが、今日のライブで海外からオファーが来るかもしれません。海外進出は考えていますか。
石井「オファーが来る来ないにかかわらず、いろんなところでライブはやりたいです。海外も近いうちに……」
●お、それは具体的な計画があるんですか。
石井「ないです(笑)」
大工原幹雄「自分らのできる限り近くってことです。10年後かもしれないし」
石井「でも、近いうちにやります」


ミドリ


メンバー
(左から)後藤まり子/ボーカル・ギター、ハジメ/ピアノ、小銭喜剛/ドラム
「大阪のいびつなJUDY AND MARY」の異名を持つ2003年結成の3人組。現在、ベースにはサポートメンバーを迎えています。あふりらんぽやオシリペンペンズらと同じく「関西ゼロ世代」にカテゴライズされているのですが、セーラー服姿で過激に歌う後藤まり子のパフォーマンスが、「パンツ脱ぎ」と相まって全国で話題に。05年のファースト・アルバム『ファースト』に続いて『セカンド』をリリースした今年は、ARABAKIROCK FEST、RISING SUN ROCK FESTIVAL、SUMMER SONICに出演。ちなみに、後藤さんの指はライブ中に折ってしまい、治療した病院が悪かったため曲がっているくっついているそうです。
公式サイト
mF247ページ


セーラー服姿の後藤まりこが幼い声で歌い始めたかと思えば、途中でデス声絶叫にチェンジ。一気に混沌とした空間に変わっていきます。後藤さんの存在感は圧巻。それに負けないほどの存在感を発揮するサポートメンバーの本能のベースや、曲に豊かな表情をつけるハジメのピアノも激しく、いまにも崩れそう。それを、タイトながらも余裕のテクニックを持つ小銭喜剛のドラムがまとめ上げています。デスジャズというかパンクジャズというか、そんな言葉ではカテゴライズできないほどの圧倒的なパフォーマンスに、観客たちはどんどん引き込まれていきました。キーボードの不調というアクシデントがありましたが、大阪から全国を席巻しているバンドの実力を垣間見た気がします。最後の曲「ドーピング☆ノイズノイズキッス」で、後藤さんが客席にダイブしたあとファンの手の上を伝い歩きしていたのですが、曲の終了とともに落下。それを気づかって仁王立ちする小銭さんの姿に、男惚れしました(笑)。


●SUMMER SONICは大いに盛り上がったようですね。
ハジメ 「SUMMER SONICは洋楽がメインってイメージがあるじゃないですか。だからあんまり来ないんじゃないかなと思ったんですけど、いい意味で予想を裏切ってもらってよかったです」
●時間が午前中でしたがいかがでした?
ハジメ 「その時間まで起きていることが多いのでつらかったですね。フェスぐらいしかそんな時間にやらないんで」
●後藤さんのライブパフォーマンスが評判になっていますが、他のお2人はどう感じてますか。
ハジメ 「ボーカルの人が一番目立つのはいいと思います。女性やし、オーラがあると思います。その点ぼくは……1人の情けない人間なんで(笑)」
●(爆笑)。
ハジメ 「メンバー全員のキャラが別々なんで、本当に面白いバンドだと思いますよ。後藤さんにはガンガンやってほしい」
●後藤さんのパフォーマンスを観てると、甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ)や峯田和伸(銀杏BOYZ)を連想してしまうのですが、この2人と対談したいとは思いますか?
後藤 「甲本さんはARABAKIで僕(後藤さんは自分のことを「僕」という)が一方的に見ただけで、峯田さんは会うたらしゃべるくらい。甲本さんは僕がファンやから、そういう人とはあんまりしゃべりたくない。別に人間性知りたいとも思わへんし、楽曲に興味あるだけ。でも、それを作ったり歌ったりしている人はスゴイと思うから、スゴイままでいいと思う。峯田さんはよく分からんから」
●(笑)。
ハジメ 「聴いてる人はそんな意識はしていないと思うけど、なぜかミドリを観に来る人は銀杏BOYZのTシャツ着ている人とかたくさんいてるし、そういう意味で、同じ音楽じゃないけど同じ空気を感じてる人がいるのかも。それが面白いなあと思います」
●「mF247」への参加経緯は?
後藤 「最初は、いつの間にかデモバージョンの『あんたは誰や』を載ってたな」
ハジメ 「一応、こんなとこやねんてことは言われたけども、半分「はい」か言ったかどうかの時点でなんかよう分からんうちに載ってて(笑)。けど結果、それが多くの人に聴いてもらうきっかけにもなったし、参加してよかったなと思います。ライブで“『mF247』で聴いたよ”とかお客さんに言われたりするし」
●「mF247」のコンセプトには共感してますか。
小銭 「丸山(茂雄)さんから(コンセプトが)ずらっと書いた紙もらったな」
ハジメ 「そうそう。丸山さんは1回ライブ観に来てくれて、そのときに長い間しゃべったんですよ。りんごジュースもらって。すごくいい人だった(笑)」
小銭 「ええ人やったなあ」
ハジメ 「『mF247』に載せることによってライブハウスに来てくれる人もいるんで、かなりいい空間だと思います。ぼくも個人的に利用させてもらっているし、広まってきているんじゃないかな」
●ほかに音楽活動でのネット利用は?
ハジメ 「実はミドリの『MySpace』ページがあるんですよ。曲上げてないし、簡単なプロフィールだけなんで、まあ、ないようなものだけど(笑)」
小銭 「初めて聞いた、それ」
ハジメ 「あれを有効に活用している人もいて、ほぼ常識的な感じになってますよね」
後藤 「いいよ、始めて」
ハジメ 「あのねえ……、えー、どうしよう。実はぼく(パソコンが)苦手で(笑)」
小銭 「見てる人ってそんなおるん?」
●1億人くらいだそうです。
小銭 「1億人! そらデカいね」
ハジメ 「世界規模だから。曲上げてるバンドも、米国の中だけでやってる人たちがいたり」
小銭 「それ、ちょっと面白そうやな」
後藤 「よく分からん」
●(笑)。
ハジメ 「知り合いにブリーチっていうバンドがいてて、その人たちが米国でライブ活動してるんですけど、それでかなりメッセージとかアクションがあったみたいですよ。海外で展開するにあたって重要な存在になりそう。海外に展開していきたいという野望もあるので」
●今回の「Firefox Rock Festival」も「全世界の1億人が見守る」がコンセプトなんで、海外展開のきっかけになるかもしれないですね。
ハジメ 「だとしたら、非常にうれしいですね」
●最後にファンのみなさんへメッセージを
小銭 「ワッショイ!」
後藤 「インターネットもいいですが、ライブにも来てください」
ハジメ 「こうしたイベントがきっかけで、ミドリを知ってくれたらいいなと思います」


少年ナイフ

メンバー
(左から) なおこ/ボーカル&ギター&ベース&キーボード、えつこ/ドラム
ご存じ、故カート・コバーンも愛した海外で一番有名な日本人バンド。ニルヴァーナとの全英ツアーは伝説の域に達しています。結成25周年を迎えた昨年に元ピンクパンダーのえつこが加入したものの、あつこが結婚を機にロサンゼルスに移住したため脱退。現在はなおことえつこの2人で活動中です。今年7月には2人体制になって初のオリジナル・アルバム『fun!fun! fun!』をリリースし、FUJI ROCK FESTIVALにも出演しました。
公式サイト
mF247ページ
MySpaceページ


オルタナな激しさの中でほんわか幸せにしてくれる少年ナイフのライブ。この日も「ラバーバンド」などで会場を幸せ色に染めてくれました。ニュー・アルバム『fun! fun! fun!』からも「Ramones Forever」などを披露。米マイクロソフトの全世界向けCMに使われたカーペンターズのカバー「トップ・オブ・ザ・ワールド」を演奏したのは、世界同時中継を意識したからでしょうか。安定感を抜群の、さすがのステージでした。


●ちょっと前になりますが、『fun! fun! fun!』発売おめでとうございます。ポップで70年代をフィーチャーした感じがよいですよね。特に、「Ramones Forever」はラモーンズへの愛を感じました。
なおこ 「ありがとうございます。そのラモーンズの映画(「TOO TOUGH TOO DIE」)で今日イベントがあるんですけど、そのトークショーに出演するんです」
●今日ステージが終わって午後11時からですよね? そして明日も吉祥寺でライブ。ハードじゃないですか?
なおこ 「ハードですねえ。もう、この夏はずっとハードで。6、7、8月はなんぼやったか忘れたほどです」
えつこ 「8月だけで9本だもんね」
なおこ 「7月にはフジロックに出たし」
●フジロックはレッドマーキーを一杯にしたそうですね。ぼくは渋滞に巻き込まれて見逃してしまったんですが(笑)
なおこ 「(笑)。ホント、たくさんお客さんが集まってくれてよかったです。自分でも今回は3日間全部観ました」



●今年のベストアクトは?
なおこ 「えーと、ジ・アンサーです。ジ・アンサー好きって言うとみんな『えーっ』ってけちょんけちょんに言われるんですけど、私はメタルが好きなんです。いまは。メタルがキテるんです。毛長いのとかかっこいい。だから、今日、ラモーンズのトークイベントで会うマーティ・フリードマンとも話が合うんですよ」
●ラモーンズとの接点は?
なおこ 「高校生くらいのときにラジオで流れてて、ガーっときて。そんでレコード買いにいって。それからずっとファンなんです。あと、少年ナイフの最初のメンバー3人で大阪ラモーンズ名前で1回だけ東京で演奏したことがあるんです。そのとき細身で長身のマネジャーがジョーイ・ラモーンのカツラをかぶって出てたら、観客が本物と間違えちゃって大盛り上がり。でも、本人じゃないって分かったらみんなしゅんってなっちゃったんです(笑)」
●それはマネジャーさんも災難でしたね(笑)
なおこ 「で、ラモーンズの最後の来日公演のとき、大阪で前座として2日間出してもらったんですよ。ライブ終わったら打ち上げに参加したり。米国に行ったときには、ジョーイ・ラモーンがプロデュースしていたジ・インディペンデンツっていうバンドのライブで、アンコールのときにジョーイと一緒にステージに上がってジャムセッションをしたり、少年ナイフがニューヨークで公演したときに、ラモーンズのカバーでマーキー・ラモーンがドラムをたたいてくれたり」
●かなり深い関係ですね。映画「TOO TOUGH TOO DIE」の内容は?
なおこ 「もう、かなり『うえーん(泣)』って感じ(笑)」



●「Firefox Rock Festival」は始まったばかりの小さなフェスですが、オファーが来たときにはどう思いましたか?
なおこ 「いや、面白そうなイベントだったら小さくても大きくても何でも出ます。フェスはいろんな人が関わって作り上げていくという、みんなの気持ちが入っている良さがあるから、すごく好きです。この間も京大でやった「(8月)ボロフェスタ」に出演させてもらったんですが、冷房もないところで出演者もお客さんもボタボタ汗かいてやるんですよ。そこで炊き出ししたりとか、いろんな人の気持ちが入ってて面白かった。あと、青森でやった「夏の魔物」という、1人の若者が去年始めたイベントにも出させてもらいました。そのイベントも平和な雰囲気がして、みんなが楽しんでいるいいイベントだと思いました」
●今回は全世界同時中継ということですが
なおこ 「そういうインターネット関係からは昔からいろいろ呼んでもらってて、90年代の初めくらいに、初めてインターネットでライブが中継されるというサンフランシスコで行われたイベント(ワイヤード)に出演しました」
●インターネットを使って曲を発表したり、トム・ヨーク(レディオヘッド)のように意見を発表したりなんてことは考えていますか?
なおこ 「曲の発表は著作権の問題があるので自分からはできないというのがあるのと、意見というのは、少年ナイフは人に意見を押し付けるのがイヤというのがコンセプトなので、自分の意見はブログでもあえて書かないようにしてるんです。もし意見とか書きたいんだったら別のものでやるかもしれないけど、別に言いたいことないから(笑)」

―マネジャーさんの話によると、海外での活動も多い少年ナイフにとって「MySpace」の重要性が高まっており、今年5月に開設しました。実は、syonenknifeのアドレスはすでに使われていたそうですが、「MySpace」の日本チームの尽力によって取得できたとのこと。これらの動きには、ご本人たちはノータッチだそうです。

●最後にファンのみなさんへメッセージを
なおこ 「少年ナイフのニュー・アルバム『fun! fun! fun!』聴いてね。楽しいよー。ロックだよー。それから、ライブもいろんなところでやりたいと思ってるから、ホームページや『MySpace』見てねー。情報出します」
えつこ 「アルバム聴いたら、ぜひライブに来てほしいです」


mF247
Mozilla 24 - Worldwide Continuous Event




 

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