ビールの王様「バドワイザー」

2005/01/30(Sun) 03:53

 アメリカで "The King of the Beers" といえばバドワイザー。1876年に発売され、それ以来ずっとオリジナルの製造方法を守り抜き、今では世界で一番飲まれているビールでもあります。しかも、米国内で消費されているビールのほぼ5本に1本がこのバドワイザーだということですから、その人気の高さがうかがえます。そしてこの「ビールの王者」を製造しているのが、アンハイザー・ブッシュ(AB)社。AB社は全世界に14の製造工場を所有しており、その内12工場がアメリカ国内に点在しています。実はここセントルイスにも、そのひとつがあるのです。それもそのはず、実はAB社自体がこの街で産声をあげ、今現在も本社と大きな工場が、ここセントルイスに置かれているのです。

 そして本社に隣接したビール工場は、一般の人々にガイドツアー付きで無料公開されています。

AB社の歴史

 ツアーを始める前にまずAB社の歴史にざっと触れてみましょう。時は1850年代。セントルイスではその頃からすでにビール製造が盛んで、40ものブリュワリーがありました。これはセントルイスにドイツ系移民が多かったことも影響しています。そんな時代背景の中、創始者の1人であるアドルフ・ブッシュがセントルイスにやって来たのは1857年のことでした。

 アドルフはこの街で、小さなビール製造会社を所有するエベルハルド・アンハイザーとその家族に出会います。アドルフはその後、エベルハルドの娘のリリーと結婚。父と義理の息子は協力してビジネスの拡大に乗り出しました。これがAB社の誕生です。このブリュワリーではアメリカで初の製品消毒プロセスを導入したりと、その頃としては画期的な経営を展開しました。1891年にはカール・コンラッド社がそれまで製造・販売していたバドワイザーの商標と製造権利を買収して、これがその後の主要商品として成長することになったわけです。

 しかし1920年にはアメリカで禁酒法が執行され、それまで順調に拡大していたAB社のビール事業も大打撃を受けました。ビールの代わりにソフトドリンクやジンジャーエールを販売して、なんとかこの危機を乗り切ったといいます。1933年にこの法律が廃止された時、AB社は記念に粋(いき)なはからいをしました。禁酒法廃止後、最初に醸造されたバドワイザーを馬車の荷台いっぱいに積み上げ、セントルイスからワシントンのルーズベルト大統領の元までプレゼントとして送り届けたのです。

 ちなみにこの馬車を引いたのがクライスデールと呼ばれる、体重が1トンもあるという大型種の馬たち。この白いルーズソックスをはいたような長い毛並みの足が特徴の馬は、その後のAB社のシンボルとなり、工場の敷地内でも飼われていて、訪れたツアー客たちにあいさつしてくれます。

 そしてAB社は発展を続けます。1941年にはそれまでのバドワイザー生産量が3,000,000樽を超え、1951年には5,000,000樽、1964年には10,000,000樽、そして2002年には総数123,000,000樽を超え、世界でもっともポピュラーなビールとしていまでも成長を続けているのです。さらに「バドライト」「ブッシュ」「ミコロブ」など次々に新しいビールを発売。現在、アメリカ国内で販売されているAB社のビールはなんと20種類を超えるまでになりました。

それではビール工場へGO!GO!

 AB社の歴史もざっと把握したところで、ビール醸造現場を見学するために、セントルイスの本社を訪れることにしましょう。ダウンタウンの南、ミシシッピ川のほとりにAB社の工場があります。大きな建物の上にでかでかと "BUDWEISER" というサインが掲げられているので、一目瞭然です。敷地内はレンガ造りの建物が並び、なんだか歴史ある大学のキャンパスといった感じ。ツアーに参加するためには、ツアーセンターというギフトショップの入ったビルに集合します。予約も必要なく、まったくの無料。観光シーズンには20分ごとにツアーが始まるので、とても便利です。


工場到着!

ツアーセンター入り口

 ツアーセンターに入ると、ずらりとAB社の製品サンプルが陳列されていました。一番上の段に飾られているのはもちろんバドワイザー! このセンター内にはもちろんギフトショップもあり、お土産には事欠きません。でも本物のビールと、友人に頼まれていた「バドガール」の水着は売っていませんでした……。あれって日本限定!?


全部味見してみたい

派手なロゴ看板

展示物もたくさん

飛行機まであります

ギフトショップ内

キーホルダー

裏が栓抜きに

 おっと、ツアーの集合の合図が聞こえました。指定の場所に行くと、壇上でガイドのお姉さんが待っています。


ツアー開始場所

 最初に5分ほど、ここで簡単な工場の歴史や見学の注意事項などを聞きまして、さっそく移動のために外に行きます。ちなみにこのツアーはほとんど徒歩で行われます。最初に見学するのは馬舎です。大きいクライスデールがお出迎え。ヒヒーン! ここには荷台も展示されていました。


お尻でご挨拶

なんか文句ある?

犬もいました!

 めったに見られない大型動物に癒されてしまう瞬間……。この馬たちはいまだに現役で、フェスティバルなどにはバドワイザー馬車として何列にも並び、パレードに参加したりしているそうです。ちなみに世界中で最も多くのクライスデールを所有しているのもAB社なんだとか。

樽倉庫は寒かった

 次にビールを醗酵させるための樽倉庫を見学。中は温度管理がされていて肌寒いほどです。ぶるぶる……。ここにドーン! と鎮座している樽。鉄製のそれはきっと中で水泳ができそうなほどの大きさ。実際この樽の内容量は、111,600ガロン(424,080リットル)で、ビールの缶にすると1,200,000個分(!)のビールが収まっているのだそうです。この巨大樽の中で3週間かけてじっくり醸造されて、あの美味しいビールが出来上がるのですね。


寒い……

 冷え切った室内から出て、今度はまたテクテクと道路を横切り、「ブリュー・ハウス」を通り過ぎます。ここではビールの原料が混ぜられ、巨大パイプで醗酵樽まで運ばれるまでの工程が行われます。ちなみにバドワイザーの原料はたったの5つだってご存知でしたか? バーレイ(大麦)、米、ホップ、イースト菌、そして水……これだけ。添加物は一切ナシの自然食品だったのですね、バドワイザーは。健康的? それにしても、さきほどからイーストの醗酵する良い香りが漂っています。これだけで酔っ払いそう。さらに建物の中に入ると、この芳醇な香りがまた強くなって、心なしか千鳥足になってしまう幸せなワタクシ(笑)。


ブリュー・ハウス

原料を混ぜるタンク

 またまた隣の建物に移ると、今度は完成したビールをビン詰めするボトリングの作業をする場所に到着しました。残念ながら、ここは撮影禁止(涙)。しかしフロアいっぱいに機械が並んで、ボトルのぶつかる音がひっきりなしに聞こえてくる様子は、とっても感動的でした。しかし出来たてのビール……飲みたいなぁ。

 さて、ツアーもそろそろ終りに近づいて来ました。今まで歩いてきた道を今度はバスで帰ります。


1分ほどだけど、快適バス

最後のお楽しみ

 そして先ほどのツアーセンターの裏側から建物に再度入りますと、そこは……。待ちに待った試飲カフェ! そう、このAB社のビール見学ツアーはなんと最後に、たった今醸造されたばかりのフレッシュなビールがサンプリングできるのです。やったー!


サンプリング会場

プレッツェルと一緒に

21才以下にはジュース

 うーん、歩き回った後の1杯は美味しいぞ。もちろんおかわりも2杯までならOK。バドワイザーの他の製品も何種類かサンプリング出来ます。ところでここでガイドさんが3人の参加者を前に呼んで、2種類のビールの飲み比べをさせてみることに。違いは、ひとつが今出来たてのビール、もうひとつが2週間以上高温の場所で保存した缶ビールとのこと。銘柄はまったく同じのバドワイザーです。でもそのことはまだこの時点では知らされておりません。


……ごくごく

 結果は味に格段の差があったとかで、3人に2人までが出来たてバドワイザーの方が美味しい! と言っていました。残りの1人は古いビールの方が味があって好きだと言っていましたが(笑)。

 さて、ビールを頂いた後はツアーは解散。また先ほどの展示室とギフトショップのフロアに戻ります。またそこをブラブラっとして今日はおひらきとしました。


社長の肖像画がお見送り

 いかがでしたか、アンハイザー・ブッシュのビール工場巡り。世界中で親しまれている飲み物がどうやって作られるのか、その裏側を覗き見してさらに試飲までしてみたワケですが、さすがに大きな工場内の施設はすべて感動的でした。日本でもサントリーサッポロビールアサヒビールなどの大手ビール会社が工場ツアーを開催しているそうです。みなさんもチャンスがあればビールが作られるその場に足を運んでみませんか?




 

Copyright (C) Narinari.com. All rights reserved.