23年間植物状態と診断されていた男性、「ずっと意識があった」と告白。

2009/11/25 11:52 Written by Narinari.com編集部

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1983年に交通事故に遭い、以来、23年にわたって植物状態と診断されていた男性を最新のスキャンシステムで調べたところ、脳が正常に機能していることが判明。しかも、男性は23年間ずっと意識があった――。そんなベルギー男性の話が欧米メディアで話題を呼んでいる。

この男性は現在46歳のロム・ホウベンさん。1983年の事故によって、ホウベンさんは体が完全に麻痺して動けなくなり、医師は「何も感じないし、何も聞こえていない状態」と考えていた。意識状態は世界的に行われている「グラスゴー・コーマ・スケール」で確認され、患者の目の動きや会話能力、運動機能を医師が見て点数化。この結果をもとに、ホウベンさんには植物状態との診断が下された。

しかし、ホウベンさんの家族はこの判定結果を全く信じていなかったという。それは、母親がホウベンさんに眼を動かすように頼むと、しっかりその方向に動かすといった反応が見られたため。このことは医師にも伝えていたが、「神経性のチック症状か偶然の一致」と一蹴されてしまったそうだ。

ところが、20年以上ホウベンさんを見続けてきた家族の考えは間違っていなかった。2006年、母親がベルギー・リエージュ大学病院の神経科医スティーブン・ロウレイズ医師にコンタクトを取り、ホウベンさんの診断を依頼。すると、「世界最高水準のスキャンシステムで調べた結果、彼の脳がほとんど正常に機能している」ことが分かった。体は完全に麻痺しているものの、はっきり意識はあると確認されたホウベンさんは、その後、激しい理学療法の甲斐もあり、今では車いすに乗り、1本の指で特別なタッチスクリーンを操り意思の疎通もできるまで回復した。

この話はロウレイズ医師が自身の研究として発表し、今週独誌デア・シュピーゲルが掲載したことで欧米メディアが注目。同誌の中でホウベンさんは、「23年間ずっと意識があった」と語り、医者や看護婦、家族の会話を聞いていたと話している。1997年にホウベンさんの父親が亡くなったことも母親の話から理解しており、最近、タッチパネルを使って「そのとき助けられなくてごめん、ママ」(英紙デイリー・メールより)と気持ちを伝えたそうだ。また、昏睡直後に医者が話した状況説明や、時々「望みがない」と看護婦が手を握ったことも覚えているというホウベンさん。「私は忍耐強さを学び、今ようやく人と同じ場所にいる」(英放送局BBCより)と現在の心境を明かしている。

ちなみに、ロウレイズ医師は「植物状態とされる44人を検査し、18人がコミュニケーションに応じた」(英紙ガーディアンより)ことも発見。「一度レッテルを張られると、それを覆すのは難しい」と、デア・シュピーゲル誌にコメントしている。

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