多大な功績を残した選手を称え、使用した背番号を他の選手が使えないようにする永久欠番。日本のプロ野球界でも巨人の沢村栄治氏が使用した「14」、長嶋茂雄氏が使用した「3」、王貞治氏が使用した「1」などが有名で、初代オーナーの大社義規氏に向けた日本ハムの「100」、球団に貢献した複数の人に向けた横浜の「100」、ファンに向けた楽天の「10」といった選手以外の永久欠番を設定している球団もある。

米大リーグでも永久欠番が存在しており、選手以外に監督やオーナー、名物アナウンサー、さらには全球団共通で永久欠番に指定されたものも。これは黒人初のメジャーリーガーであるジャッキー・ロビンソン（元ドジャース）の背番号「42」で、ヤンキースのマリアノ・リベラ投手を最後にすべての球団で使用されないことになる。

また、ヤンキースではベーブ・ルースの「3」やルー・ゲーリックの「4」など全球団最多となる16の永久欠番が設定されているが、準永久欠番を含めて1つもないのはマリナーズ、ナショナルズ、ダイヤモンドバックス、ロッキーズの4球団のみ。ダイヤモンドバックスとロッキーズは1990年代創設、ナショナルズは05年創設の若い球団だが、マリナーズは77年創設。30年以上経て1人も永久欠番がいないというのは珍しいケースではないだろうか。

こうした中、マリナーズの地元紙シアトル・ポスト・インテリジェンサーの記者スティーブ・ルドマン氏が同紙電子版内に開いているブログで、球団史上初の永久欠番に「51」を推薦。イチロー外野手とランディ・ジョンソン投手（現ジャイアンツ）のどちらの背番号として欠番にすべきかを問いかけた。これに対し、読者の間で議論が繰り広げられている。

ジョンソン投手は、89年にエクスポズからマリナーズに移籍し、90年のノーヒットノーラン、95年のサイ・ヤング賞、97年の20勝はすべて球団史上初で、98年にアストロズへ移籍するまで130勝74敗、奪三振2162、オールスター出場5回などを記録。95年と97年の地区優勝にも貢献している。

これらのことからルドマン氏は、95年10月2日のエンゼルス戦での投球を重要視して「あの日のジョンソンのパフォーマンスなくして、マリナーズ本拠地建設に必要な支持を得られることはなかった。ジョンソンの勝利はシアトルの野球を活性化させた」と絶賛している。

しかし、イチロー選手の活躍度もそれに劣ることはない。ルドマン氏はイチロー選手の輝かしい実績を羅列したうえで、「現在ユニホームを着ているのはイチロー」「文化の違いを乗り越え、日本人野手として初めて成功した選手」とし、イチロー選手の背番号として永久欠番にすることを推薦した。

これに対し、読者から寄せられたのは「ジョンソンは90年代のマリナーズを代表する選手だった。けれど、大金を求めての移籍で評判を落としている。イチローはここ数年、球場に足を運ばせる極めて少ない理由の1つ。（「51」の永久欠番が）1人しか指定できないならば、イチローであってほしい」「双方ともに永久欠番に値するけど、球団への忠誠心ではイチロー。彼に報いたい」とする意見が多数。イチロー選手は多くのマリナーズファンに愛されていることがうかがえる。

その一方で、「ランディ・ジョンソンは球団を去るためにわざと負けた。スズキは利己的な選手で、マリナーズよりもWBCに情熱を燃やしている。51番のユニホームを燃やしてくれ」との批判や「イチローはトレードに出してほしい。その後の51番はブルペン捕手にでも着させておけ」という声も。

このほか、ヤンキースの永久欠番「8」がビル・ディッキー、ヨギ・ベラ両捕手に贈られたことから、「1人にしぼる必要はないでしょ。2人の番号として永久欠番にすべき」「背番号の名前を『JOHNZUKI』とすれば解決するんじゃない？」などの議論が行われており、「ランディなしでセーフコフィールドはなかったけど、イチローなしでも何も変化ない。イチ、リーダーとしてぼくらを決勝戦へ導き、ぼくが間違っていることを証明して！」との“激励”も寄せられている。

ちなみに、マリナーズは永久欠番に関して「生え抜きでキャリアを終える」「5年以上在籍して野球殿堂入りを果たす」という基準を定めている。前者はともに満たしていないものの、後者についてはともに5年以上在籍しており、これまでの実績を考えると殿堂入りは濃厚。年齢からしてジョンソン投手のほうが早く引退する可能性が高いが、マリナーズがどのような判断を下すのか、注目だ。