スペインの44年ぶりとなる優勝で幕を閉じたサッカー欧州選手権（ユーロ2008）。「無敵艦隊」といわれながらも国際試合では苦杯をなめ続けた同代表の活躍は、多くのサッカー評論家やジャーナリストが称賛している。海外サッカー専門誌「ワールドサッカーダイジェスト」元編集長でサッカーライターの粕谷秀樹氏も、OCNスポーツに「粕谷秀樹が語る、スペインの勝因」と題したコラムを6月30日付で掲載し、ルイス・アラゴネス監督から代表選手たちを褒め称え、GKイケル・カシージャス選手（レアル・マドリード）の祖母がスペイン国内でアイドルになったことを記していた。

ところがこのコラム、スペイン・バレンシア在住のサッカーライター、小澤一郎氏がブログに記述していたものとほぼ同じであることが、同ブログ読者の指摘によって判明した。小澤氏は6月30日更新のエントリー「おめでとう、スペイン！」で「個人的にはフットボリスタでも書いたんですけど、GL2試合まで全チームをみて『スペインいけるぞ』と思ったんですよね」などと記したが、粕谷氏のコラムではこの部分から最後まですべての記述が重複。冒頭にある「『準決勝、決勝は比較的安心して見ていられました。イタリアとの試合がキーだったんでしょうね……』。粕谷氏が語る、スペインの勝因」の『』の部分も小澤氏の記述と同じだったのだ。

読者の指摘によってこのことを知った小澤氏は、7月5日午前0時の更新で「ブログに頂いたコメントで初めて知ったのですが、OCNスポーツにある粕谷秀樹さんの『スペインの勝因』というコラムが先日私が書いたブログの記事と重複していたようです」と記し、「私自身もこのコラムを読んで目が点になりました。どうなっているのか全くわかりません。私はゴーストライターなわけでもなるつもりもありませんので、当ブログの記事をコピペされたというしか説明のしようがありません。一応、私の方から事情説明を求めるつもりですので何かわかりましたらまた報告させてもらいます」と困惑している様子だった。

小澤氏のブログのコメント欄には、読者から「粕谷氏はプレミアを最高に位置づけていましたし、事前の予想でもスペインはウイングを連れていかないから勝てないというような論調を張っていましたから、OCNから勝因は何と言われてもはっきり答えられなかったのだと思います」という声や、粕谷氏がスペインリーグ・代表嫌いで有名であることから「スペイン代表が優勝という最悪な結果に終わった為 真面目にコラムを書く気が起きずに、このような行為に及んだのではないでしょうか」などの推測が寄せられたが、「粕谷さんの文体・彼のふだんからの主張と当然ながらかけ離れている」「これはおそらく編集する側のミスとかでしょうね」との指摘も。

また、このことを7月5日に取り上げたサッカー専門サイト「サポティスタ」のコメント欄でも、「こんな稚拙な盗用はありえないだろう・・・」「小澤さんもOCNで記事書いてるから、たんにOCNが小澤さんの名前表記を粕谷さんと間違えただけじゃないのかな。もしOCNのミスだったら、盗作って広められてる粕谷さんが気の毒だわ」と、「盗用」ではなくなんらかの「ミス」であると指摘する声が強かった。

こうした中でOCNは同日午後10時頃、件のコラムについて「先日掲載致しました当記事の内容が、他サイトの内容と酷似しており、読者の方々には大変ご迷惑をおかけいたしました。内容を訂正させて頂くと共に、ここにお詫び申し上げます」と謝罪し、内容を差し替えた。

粕谷氏のコメントも掲載されており、それによると「通常、諸先輩、同業者の方の原稿に目を通して勉強させていただいており、資料として保存しておりました。ところがその原稿を送信してしまったのです。確認を怠るという、あまりにも軽率なミスでした。盗作をするつもりなどございませんでしたが、読者の皆様、ならびにサッカーファンの皆様に多大な迷惑をおかけしたことを、ここに謝罪いたします。たいへん申し訳ありませんでした」とのこと。どうやら粕谷氏のうっかりミスだったようだ。

これについて「サポティスタ」には「粕谷ファンじゃないですけど、『盗用』とするのは可哀相な気が…」という声もあるものの、「この言い訳ありえないだろ…」「まあ、悪意のない単純ミスだったのは認めるが、今後は彼の記事が信じられなくなるのは仕方ないかな」との意見が寄せられている。

ちなみに差し替えられたコラムでは、粕谷氏はスペイン代表MFマルコス・セナ選手（ビジャレアル）を称賛しつつも、優秀選手に選ばれたカルレス・プジョル選手（バルセロナ）やカルロス・マルチェナ選手（バレンシア）らDF陣、さらに決勝点を挙げたFWフェルナンド・トーレス選手（リバプール）を酷評した。