「骨の折れる仕事」が「骨折する仕事」、低下する学生の国語力。

2007/04/30 18:40 Written by コジマ

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4月20日の衆院教育再生特別委員会、民主党の菅直人代表代行が「美しい国へ」の内容について追及したところ、安倍晋三首相は「もう少し国語力を鍛えていただきたい」と返答。菅代表代行も「その言葉をあえて総理にお返ししたい」とした。まあ、こんな学級会のような応酬は置いといて、国語力の低下が懸念されているのは事実。コミュニケーションの根幹を成す国語力の向上は、教育問題の中でも喫緊の課題となっているのだ。

こうした国語力の低下が話題になっていることを反映して、「大人の『国語力』が面白いほど身につく!」(青春出版社)や「これ一冊で国語読解力がつく本」(宝島社)などの書籍が出版され、通信教育のZ会の「国語力検定」や東京書籍の「日本語検定」などの検定も登場している。

7月に実施される「国語力検定」は、小学4年から中学1年までが対象。この検定を紹介した読売新聞の記事では、「折り紙付き=おもちゃを買ったら、折り紙付きだった」「視野=兄はコンタクトレンズにしてから視野が広がった」といった小学生の慣用句を使った誤文や、中学生の「成積」「こんにちわ」などの誤字を挙げ、〈こうした国語力の不足から、算数・数学などの文章題の意味そのものがわからない例も珍しくない。〉としている。

この記事では、社会人までも対象とした「日本語検定」も紹介しているのだけど、今度は産経新聞に驚くような記事が掲載されていたのだ。その記事によると、“日本語が通じない”学生や社会人が増えているのだそう。

同紙が取り上げているのは、九州地方の私立短大に勤めている講師の体験。社交性などを診断する性格検査の際、配った解答用紙に書いてあることが理解できない学生が少なくなかったという。まず「怠惰」や「まごまごする」の意味が分からない。これはこの講師の想定内だったようだけど、「骨が折れる仕事は嫌です」という項目に対して、女子学生が「『骨折する仕事』が嫌なのは当たり前。違う意味があると思ったので…」と質問してきたことについては驚いたようなのだ。

この兆候は数年前からあったようで、講義中の指示や説明を書いた紙が読み取れないため、以前はすんなりと行われていたものが成り立たなくなってしまっているとのこと。まさに、“日本語が通じない”状態なのだ。

さらには、英文解釈の講義で「often」の意味を「よく〜する」と覚えている学生が多いらしく、「しばしば」や「頻繁に」という訳語が理解できないそうなのだ。さらには、「よく」を「good」の意味ととらえている学生もいるみたい。

驚くのは、これがすべて大学生だということ。メディア教育開発センターが日本語基礎力を調査したところ、ある私立大学では「中学生レベル」と判定された学生が6割にものぼったのだ。この調査を実施した同センターの小野博教授によると、「学生の日本語力は外国人留学生と同等かそれ以下」だそうで、これは国民の大半が大学に進学するという「大学全入時代」になったことが一因となっているようなのだ。

同紙ではこのほか、社会人の国語力低下にも言及しており、実際に企業から寄せられた「オペレーターが日本語で書かれた取り扱い説明を理解できず、機械を故障させた」「社員が送った言葉足らずの電子メールが取引先を立腹させ、受注ができなくなった」というエピソードを紹介している。

こうした国語力の低下は日本だけの問題でなく、CNNのニュースによると、アイルランドでも特に書く力の低下が懸念されているのだそう。アイルランドの教育委員会は、携帯電話のメールによる弊害とし、「生徒らが書く文章は、語彙が少なく、短い文章で、時世変化がない」と分析している。これは日本にも当てはまることなのかもしれない。うーむ、安倍首相も菅代表代行も、学級会のような答弁をしている場合ではないのだ。

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