ネズミが電気コードをかじるのは……?

2005/05/25 06:35 Written by コジマ

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かつては、漫画「ドラえもん」でドラえもんを恐怖のどん底に陥れるほど頻繁に出現していたネズミ。現在では一般家屋で見かけることはほとんどなくなったのだけれど、それは表面上の話で、現在は飲食店や片付けが行き届かない独居高齢者の住宅内での被害が増えているそうなのだ。昨年、東京都に寄せられたネズミ被害相談件数は約16000件にものぼり、そのなかでもネズミが電気コードをかじることによって起こる「ネズミ火災」は深刻な被害を及ぼしている。被害を未然に防ぐためにもその習性の研究が急務だったのだけれど、このたび、名古屋市消防局の実験でその習性の機序が明らかになったのだ。

同消防局の名古屋市西消防署は昨年の6月、市街地でドブネズミやクマネズミを20匹ずつ捕獲し、電気コードを配置した飼育箱を6箱用意して、同署駐車場で実験を始めたのだ。うお、実験場所が駐車場なんて、泥臭くて好感が持てる実験なのだ。その結果、電気コードのかじられた場所が、いずれも飼育箱内の各部屋に通じる出入り口に集中しており、警戒心の強いネズミの習性から、安全な出入り口の目印としてかじっている可能性が示唆されたそうなのだ。

「ネズミ火災」の原因は、「安全目印」としてかまれ、銅線がむき出しになった電気コード付近にある炭化したフンに引火することなのだそう。ネズミが防げなくても少なくとも清潔にすることで火災被害は免れそうなのだ。

日本におけるネズミ被害の歴史をひもとくと、高度成長期に出ていた、つまり「ドラえもん」で登場するようなネズミは、おもにドブネズミという種類のもの。泳ぎが得意で、側溝や下水などの水気が多い場所に好んで棲息するというネズミで、実験動物であるラットはこの亜種なのだとか。いわゆる日本での一般的な“ネズミ”のイメージがこのドブネズミで、食べ物を食い散らかすだけでなく、病原菌を媒介するなど「写真には写らない美しさ」があるとしても、その被害は深刻だったのだ。しかし、側溝や下水がふさがれ、殺鼠剤の散布によってほどなく町から姿を消してしまうのだ。

そして、そのあとに幅を利かしたのが、クマネズミ。クマネズミは木登りが得意で乾燥したところを好むため、側溝や下水がふさがれ、高層ビルが建ち並ぶ現代にマッチしたネズミなのだ。しかも、クマネズミのなかには「スーパーラット」と呼ばれる殺鼠剤がまったく効かないものも登場したので、1年中繁殖するクマネズミは一気に増えたのだ。かつてはデパートやスーパーでの被害が甚大だったのだけど、現在は徹底した駆除を頻繁に行っているそうで、そこを追い出されたネズミたちが飲食店や片付けが行き届いていない住宅に顔を出すようになったのだとか。

身内の話で恥ずかしいのだけれど、ぼくのばあちゃんも以前は1人で暮らしており、その家の汚さは言葉を失うほどのもので、遊びにいくのも二の足を踏むような有様だったのだ。普段の片付けは近所に住むおばさんに任せていたのだけれど、あまりにもきれいにしないので、母ちゃんと意を決して掃除しにいったのだ。ばあちゃんの家に着いてから、電話をしようとしてもまったくつながらない。電話料金はウチでちゃんと払っているのでおかしいなと思ってモジュラーコードを見ると、見事にネズミにかじられた跡があったのだ。よく見ると、棚や電話台の裏はネズミのものと思われるフンがたくさん散乱しており、ヤツらの存在を確信したのだ。

で、ネズミ嫌いの母ちゃんをなだめつつ掃除を始めると、部屋の隅からネズミの死体を発見。パニックになった母ちゃんは家を飛び出し、乗ってきたクルマに戻ってしまったのだ。虫さえ苦手なぼくもネズミが得意なはずがなく、途方に暮れていると、そこに同席していたばあちゃんが「ネズミ? あらまあ。あたしもねえ、ゴキブリは平気だけど、ネズミはちょっと怖いのよ。うふふ」と笑いながら話していたのだ。結局、掃除はおばさんに任せることになり、ぼくら一目散に家に帰ったのだ。今思うと、よく火事にならなかったなあ。

実験を行った消防署の人によると、ネズミにかじられないように電気コードを建材に埋め込んだり、隅に寄せないように配線を工夫したりすることで「ネズミ火災」を防ぐことができるのではないか、とのこと。ネズミに見初められると駆除はかなり困難だそうだけど、食べ物やゴミを放置せず、清潔さを保ち、配線はすっきりさせることが被害を防ぐ手だてのようなのだ。

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